日本での「リスキリング」は、いまだ個人に寄りかかる部分も大きく、企業や自治体といった組織が中心になって取り組む環境が整備されているかと言われれば、課題も多く残る。
しかし、日本でもリスキリングで成功を収めている企業がある。SNSで話題となった割れない食器「ARAS(エイラス)」で成長を続ける石川県加賀市の石川樹脂工業株式会社だ。
リスキリングの第一人者である後藤宗明さんの著書『AI 時代の組織の未来を創るスキル改革 リスキリング【人材戦略編】』(日本能率協会マネジメントセンター)から、一部抜粋・再編集して紹介する。
新規事業を成功に導くリスキリング
2024年、日本経済新聞社が主催する日経リスキリングサミットアワードにて大賞を受賞した石川県加賀市に本社を置く石川樹脂工業株式会社は、チェンジマネジメントの一環としてリスキリングを成功に導き、労働生産性を3年間で2倍、新規事業を全社売上の7割超にまで成長させた実績を持つ地域の未来を牽引するエクセレントカンパニーです。
事業内容は樹脂製の食器雑貨、工業部品、仏具、その他OEM商品の企画、製造並びに販売ですが、下請けを中心とするOEMの事業から企業変革に取り組み、現在では自社の食器ブランド売上が7割にまで成長する大胆な変化を遂げています。

背景として少しだけ石川県加賀市について触れておきます。石川県加賀市は2014年に消滅可能性都市リストの中に名を連ねていますが、宮元陸市長のリーダーシップのもと、国家戦略特区の1つである「デジタル田園健康特区」指定されており、さまざまな新しい取り組みが次々と生まれている地域です。
しかし少子高齢化が進み、労働者確保にも困難を抱えています。石川樹脂工業の石川勤専務取締役が2016年に着任し、さまざまな企業変革の取り組みを開始しました。
まず「公平さ、透明性、誠実さ、責任感、チャレンジ精神」の5つの価値観を目指すべき会社像として社員の皆さんと共有し、「素材の力で世界を変える、働き甲斐のある会社」を目指すというビジョンを掲げました。
リスキリングのため実践したこと
以下に石川樹脂工業のチェンジマネジメントとリスキリングの取り組みをご説明します。