「リスキリング」という言葉が認知されつつある一方で、その取り組みや手法はまだ日本で導入されていることも少なく、いまだ「自己啓発」との違いもあいまいなまま。
そんななか欧米では、リスキリング3.0の時代へ。スキルを起点とした雇用システムへと変化してきていることで、従業員らのスキルを可視化・把握する「スキルテック」に注目が集まっているという。
リスキリングの第一人者である後藤宗明さんの著書『AI 時代の組織の未来を創るスキル改革 リスキリング【人材戦略編】』(日本能率協会マネジメントセンター)から、一部抜粋・再編集して紹介する。
なぜ注目が集まっている?
2021年頃からHRテックの派生系として、SkillsTech(スキルテック)という言葉が流通し始めました。米国のHR分野の著名コンサルタントであるジョシュ・バーシン氏は、「仕事に必要なスキルを分類、評価、管理、改善するためのツール」と説明をしています。
なぜHRテックの中でもこのスキルテックに注目が集まっているかというと、大きく分けて3つの理由があるのではないかと考えられます。

(1)スキルベース雇用へのシフト
新型コロナウイルス感染症が広がった影響で急速にデジタルトランスフォーメーションが進み、新たな成長分野としてデジタル分野の事業領域に乗り出す企業が増え、現状と比較をして人材のスキルギャップが急激に拡大をしていることが背景にあります。
特に米国ではコロナからの回復が比較的早かったため慢性的な人材不足に陥り、一時期は1000万件以上の求人募集がずっと続いていました。そうした人材不足を埋めるために、今までの採用方法では候補者の母集団が増えないため、スキルベース雇用(Skill-Based Hiring)という考え方が広まったのです。
4年生大学卒業といった資格要件をなくし、本当に必要なスキルを持っている候補者を採用するというフェアな手法に原点回帰していっているのです。そのため候補者となる人材のスキルを正確に評価する仕組みが必要になり、スキルテック分野のスタートアップが次々とサービスをローンチしているのです。
(2)社内配置転換のためのリスキリング推進
急速な業務のデジタル化やデジタル分野の新規事業を担う人材の必要性から、既存の社内の人材をリスキリングし、社内でInternal Mobility(労働移動)の必要性が前述(1)と並行して高まっているのです。
そのため、現在社内にいる従業員がどんなスキルを持っているのか、を正確に把握し、スキルの棚卸しが必要になっていることが挙げられます。