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今回は、北九州市の観光名所「門司港エリア」で、築74年という廃墟のような団地を買い取り、“夢を叶える場所”へと再生するユニークな取り組み。古すぎる団地がすぐに満室となったわけとは…。(2025/9/17配信分に一部加筆・修正、本文中の肩書・年齢等は取材時のまま)

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 築74年“廃墟”のような団地を再生

北九州市のJR門司港駅から車で約5分。ゆるやかな坂を少し上るとまるで廃墟のような建物が現れる。さびついた窓格子に、今にも崩れ落ちそうな電灯…。奥には、壁一面が植物に覆われた建物も見える。築74年の「旧畑田団地」だ。

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旧畑田団地は福岡県住宅供給公社が事業計画して1951年に竣工した団地で、敷地内には4階建て全24戸からなるA棟と、その背後にあるコンクリートブロック造り2階建て全10戸のB棟が建っている。県内で3番目に古い団地だ。

完全な空き家と思いきや、A棟に足を踏み入れると2階でカフェが営業していた。1年ほど前にオープンしたカフェ「デイジーワールド」だ。

6畳と8畳の2部屋にコンパクトなキッチンがついた2Kという最近の集合住宅ではあまり見られない間取り。40平方メートルの室内にはナチュラルテイストの雑貨や照明が飾られている。廃墟のような外観からは全く想像できないおしゃれな内装だ。

このカフェを営むのは末満瑞穂さん(58)。普段は大分県内で看護師をしていて、1か月に4回ほどこの場所でカフェを営業しているという。

家賃1万円 全34部屋が満室に

末満さんがこの団地でカフェをオープンした決め手は格安の賃料。「なんと、1万円」と笑う。古いとはいえ人気の観光スポット「門司港エリア」にある2Kの部屋としては破格の安さだ。

この団地を買い取って再生させようとしている仕掛け人が「吉浦ビル」の森田英介さん。古い団地をクリエイティブに改装して、新たに起業する人を育てることが狙いと話す。

その名も「渋沢プロジェクト」。日本の資本主義の父と呼ばれ、数多くの会社の設立に携わった渋沢栄一にちなんで名付けられた。

この団地を借りる際の条件は「入居者が自分で改装(DIY)を行う」「家賃1万円は3年間のみ」というの2点。

この条件で入居者を募集すると約4カ月で全34部屋が満室になった。新たなプロジェクトを進めるにあたり団地の名称も旧畑田団地から「門司港1950団地」と改めた。

そもそも森田さんはなぜ、廃墟のような団地を買い、新たなプロジェクトを始めようと思ったのか?

「地方で古い物件を活かしていくことが社会的にも価値があるのではという思いで、この物件を失くすわけにはいかないと」と話す。

「門司港1950団地」には、賃料の安さに加えて「古い物を生かして新しい価値を作る」という森田さんたちの思いに共感する人々が次々に集まってきた。

カフェやバー 探偵事務所まで入居

「外観の素敵さにハートを打ち抜かれて、中を見てボロボロで、『んっ?』と一瞬は思ったけど、これをきれいにしていくストーリー性にも魅力を感じて…」と、デイジーワールドの末満さん。

改装にかかる材料費の一部を管理会社が負担し、DIYの知識を共有しながら完成まで手厚いサポートを受けられるのも魅力だ。

入居者第1号となった末満さんの店には、開店1年ながら「静かな感じが心地いい」とその魅力に引き込まれた常連客や、15年以上前にここに住んでいたという大学生たちも訪れる。

「もう1度、中に入れると思っていなかったので、すごくうれしい。子供のころ、窓の上に乗ったりして遊んだりしていた」と懐かしそうに当時を振り返る。

「門司港1950団地」では今、各部屋で開店準備の改装作業が進んでいる。「本が大好き」と話す児嶋桜さん(26)は自宅に眠っている自分の本を大勢の人に見てもらいたいと「ブックカフェ」をオープンする予定だ。

 
 

「この場所は、鳥や木の音とか自然の音が聞こえるのが素敵。それぞれが落ち着いて自分の時間を過ごせる場所にできたら」と自分好みの内装にしようと初のDIYに挑戦中だ。

レコード収集が趣味だという竹元弘一さん(64)は、レコードを中心とした『ミュージックバー』をやりたいと話す。

定年退職をきっかけに長年の夢だった音楽好きが集まる店を開くことを決め、妻の淳子さん(59)と共に7月のオープンを目指している。

「ゆくゆくは子供たちに音楽を聴かせてあげたい。いわゆるジャズでもポップスでも、オールディーズだが、『子ども食堂』のような形で音楽を聴かせてあげたい。しかもいい音で」

竹元弘一さんの「コレクション」
竹元弘一さんの「コレクション」

準備を進めながら竹元さん夫妻の夢はさらにふくらんでいるようだ。

この他にも「キッチンスタジオ」や「ベーカリー」「探偵事務所」など個性的なテナントがオープンを予定している。

九州にある1万棟の空き家を再生へ

プロジェクトを進める森田さんは「門司港の歴史やいろんな文化・風景が残っている場所。この先も100年、その先も続いていくような場所であってほしい。この物件があるから門司港がより面白くなったよねと思ってもらえるような場所にしていきたい」と熱く語る。

さらに森田さんの会社では今後10年で九州にある1万棟の空き家を再生することを目標にしているという。

夢を持つ人の挑戦の舞台となっている北九州市の「門司港1950団地」。門司港エリアの新たな観光スポットして注目されそうだ。

(テレビ西日本)

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