同僚や親しい友人との雑談でも、仕事以外の話や自分の話がうまくできないことがある。また、「私の話なんて…」と思ってしまい、そうした場で聞き役に徹してしまうことも。
しかしそれでは、自分の思考や感情がわからなくなり、そしてわからないから話せなくなってしまうという悪循環に陥ってしまう。
2020年にマンツーマン雑談サービスを立ち上げ、1回90分の雑談をこれまで3000回以上している桜林直子さん。著書『あなたはなぜ雑談が苦手なのか』(新潮新書)から、なぜ自分の話をすることができないのかを一部抜粋・再編集して紹介する。
自分の話をするのをためらう人
誰かとふたりきりで話す場でも、自分の話をするのを躊躇してしまうと言う人もいる。
「相手の時間を奪ってまで自分なんかの話を聞いてもらうのは申し訳ないので」
「わたしの話なんて別に面白くないから話す価値がないし」
「自分の話をするよりも聞いている方が楽だし、役に立っていると思えて安心する」
だから、いつも聞き役に回ることになる。
「じゃあ、自分の話はいつするんですか?」
「ほとんどしないですね」
「自分の考えていることや思っていることを人に話さないと、自分でもわからなくなりませんか?」
「そう、わからないです。聞かれても答えられないから、より話せなくなるんです」
自分の話には価値がないからと、人に話さず後ろに追いやっていると、いざ話そうとしたときや、話さずとも何かを選択し決めないといけないときに、自分がどう思い、どうしたいのかが自分でもわからなくなっていることに気がつく。
考えや思いを出さないでいると、出てこなくなるのだ。
「わたしの話なんて」と価値を下げているのは誰でもない自分自身で、相手にとって話が面白いかどうかの前に、自分の考えや感情の価値を低く見ている。
自分の話をせずに相手の話を聞いていれば安心するというのは、自分をうっすら消して相手を大事にする方が楽だということだ。自分がどう思うかよりも、相手がどう思うかの方を大事にするべきだというクセがあらわれている。
