子どもたちが生成AIを使い「50年後」をイメージしたパッケージを考えると、どんなクリエイティブな作品が生まれるのだろうか。
11月29日にアドビ株式会社とカルビー株式会社共催の親子向けイベント「“子どもと一緒にタイムトラベル!”生成AIでデザインする50年後のカルビーポテトチップス」が都内で行われ、小学生と保護者約40人が参加した。
このワークショップのテーマは生成AIを使って、今年50周年を迎えたカルビーポテトチップスの50年後の味とパッケージをデザインすること。子どもたちが持ち前の発想力を存分に活用し、生成AIツールを使いこなして思い思いのデザインを誕生させた。
面白そう!を生成AIを使ってカタチに
「ポテトチップスの発売から今年で50周年!たくさんの人に愛されてきたポテトチップスは、今から50年後にはどうなっているでしょうか。生成AIを使って想像しながらデザインしてみましょう!」
このかけ声とともに目をキラキラと輝かせる子どもたち。活用するのはアドビのデザインツール「Adobe Express」。豊富なデザイン素材やデータを魅力的なコンテンツに仕上げる、生成AI搭載のアプリだ。
同社広報部の吉原淳さんは、さらに子どもたちの想像力を引き出すべく、こう呼びかける。
「モノをつくることもそうですが、こんなことをやったら面白そう、こんなのがあったらいいなって“思う”だけでもクリエイティブです。今日はそんな“思い”をカタチにしてみてください」
ワークショップのレクチャーを担当したのは、イラストレーターの北沢直樹さん。これまでも「Adobe Express」などを対象としたイベントで講師を務めている。
生成AIでの創作作業を早くもマスター
はじめに挑戦したのは、現在のポテトチップスのパッケージ。デザインのテンプレートをもとに、「うすしお味」の文字を入れてみたり、画像の切り抜きや加工などをパソコンやスマホを使って作業。
ほとんどの子どもが初めてAIに触れたそう。見慣れたパッケージの文字の大きさや色を変えてみると、子どもたちから「おぉ!」と感動の声があがった。
最初は試行錯誤しながら、「Adobe Express」を使っていた子どもたちだが、驚くほどのスピードで使い方をマスター。「AIを使って写真の背景を消す」なんてことまでできるように。
アドビのスタッフもサポートしていたが、のみ込みの早さや発想の柔軟さに驚きながらも、「デザインに不正解はないんです」と優しく見守った。
ちなみに、「Adobe Express」に搭載された生成AI機能は「Adobe Firefly」と呼ばれ、そのAIは著作権フリーや商業利用が可能な素材やコンテンツのみで学習している。そのため、生成されたコンテンツは、著作権的にも商用利用が可能で、子どもにも安心して使ってもらえる内容になっているという。
誕生した50年後のパッケージ
いよいよ本題の「50年後のポテトチップスのデザイン」へ。まずは、どのような味やテーマにしたいかを「準備シート」に記入。そして、「Adobe Express」で作っていく。
早くもツールをマスターした子どもたちが真剣な表情で生み出した味は「まぐろのだし味」「激辛ホラー味」など、大人の発想ではなかなか出てこないものばかり。
最後に、それぞれが作り上げたデザインを発表していく。「冷え冷えアイス味」や「火星栽培のサラダ味」といった、個性豊かなパッケージの数々が誕生した。
「夜のひととき味」は、食べたら一日の疲れが取れるという、ちょっと大人なコンセプト。この味を作った男の子は、はじめに「疲れを取る→夜」と連想したという。その後、「夜」をキーワードにパジャマを着たウシガエルに到達。「月」も表現したくなって、ポテトで月を描き、パッケージの右上に添えたという。
「生成AIについてあまり知らなかったんですけど、操作がわかるようになって大好きになりました」と笑顔に。
その姿を見ていた母親は、「8歳の子どもが、こんなものまで作れちゃうって感動です。私もAdobe Expressは初めてでしたが、子どもが感覚的にどんどん進めていくので、ついていけませんでした」と嬉しそうに語った。
「星屑味」を生み出した女の子は、「未来って、光っているイメージなんです!」と、そのイメージのままに星空をあしらい、「星屑味」の文字周辺の青いラインを金色の縁で囲って、キラキラを表現するといった細部へのこだわりも。
娘の作業を見守っていた父親は、「すごく楽しそうで。わずかな時間でここまでできること、デザインが身近になっているようで、すごい時代だと感じました」と話した。
「マグマ味」をデザインした男の子は辛い味を表現したいと思い、生成AIにいろいろなイメージを出してもらい、「火山」から着想を得て、「マグマ・モデル」をつくったという。「この部分を黒くして」「マグマの字をドロドロにして」といった指示にAIが応えてくれたそうだ。
なかには、生成AIへの指示を明確にするための「プロンプト」をAIにつくってもらい、そのプロンプトを用いて自分が思い描いたデザインに近づけたという子も。
最後はそれぞれのデザインが印字されたパッケージが手渡された。形になったものを手にした子どもたちの表情は達成感とうれしさで満ちあふれていた。
期待を超える子どものAIと創造の可能性
子どもたちの生成AIを使った創意工夫ぶりを見ていた北沢さんは、子どもの直感とAIの相性の良さを感じたという。
「AIには子どもの『これがしたい』を直感的に実現できる技術があるんだと感じました。普段、大人にはプロンプトを教えたりしますが、今日はその時間をイベントの都合上、確保できなかった。でも、やり方を教えなくてもためらいなく、イメージでどんどんできてしまう。
箇条書きでも単語の羅列でも打ち込んでいく。例えば、『レインボー 恐竜』と入力すれば、遊び感覚で七色に光る恐竜の画像をつくることができます。生成AIが子どもの頭の中を再現してくれる。子どもたちの表現の幅が広がることがうれしいです」
デザインやモノづくりをはじめとした「クリエイティブ」は、専門家やプロの仕事で求められることが多く、そこにハードルやとっつきにくさがあった。しかし、生成AIの発展でツールも身近になり、誰もがクリエイティブなことがしやすい時代に。
Adobe IllustratorやAdobe Photoshopなどの製品で知られるアドビ株式会社は、すべての人がクリエイティブを発揮できる未来をつくる「クリエイティブの民主化」を目指し、今回のようなワークショップも積極的に開いている。
同社の広報部・吉原さんはこうした取り組みを通して感じた子ども×生成AIを使ったクリエイティブの可能性をこう語る。
「私たちアドビは『すべての人につくる力を』というミッションで、どんな人でもクリエイティビティを発揮できるアプリを、と開発を続けています。今日、小学生の子どもたちに我々の期待値を超える作品をつくってもらいました。
『クリエイティブの民主化』の流れが広がっていく手応えを感じています。クリエイティブはプロだけのものではありません。我々は使いやすいツールをつくります。なので、思ったこと、やりたいことをどんどん表現してもらえたらうれしいです」
