ケガをして血が出ると、血が固まってかさぶたができ、血が止まる。誰もが知る人体の「常識」だ。
ところが、血がなかなか固まらず、止まりにくい体質。それが「血友病(ヘモフィリア)」。
血が止まりにくいと、日常生活の様々な場面で気を付けなければならないことがある。しかし、血友病の人は外見からはわかりにくい。だから、周囲の理解が広まるとより暮らしやすくなる。
この記事では、血友病の基本知識に加え、「血友病の人がどんな場面で困るのか」などを解説していく。
(この記事は中外製薬の血友病情報サイト「Smile-On」に基づいています)
血友病ってどんな病気?
そもそも、「血が止まりにくい体質」とはどういうことなのか。
人間は、血管が切れたり破れたりして出血すると、「血管」「血小板」「血液凝固因子」の3つの要素が次々と連携して、止血のために働く。
その過程は次の3ステップで行われる。
(1)まず、血管が収縮して血液が外へ流れ出るのを防ぐ
(2)次に血液中の成分の1つである「血小板」が傷口に集まり、「血小板血栓」と呼ばれる血小板の塊ができる。この血小板血栓が傷口に栓をすることで応急処置になる。
(3)最後に、血液中の「血液凝固因子」がフィブリンというたんぱく質を作る。フィブリンが血小板血栓をさらに強固なものにする役割を果たす。
これが止血のメカニズムだ。
ところが血友病の人は、この3ステップ目の「血液凝固因子」が不足しているため、血が固まりにくい。
なお血液凝固因子には複数の種類があり、不足する種類の違いにより、血友病Aと血友病Bに分けられる。
厚生労働省の調査(血液凝固異常症全国調査)によると国内には、血友病Aの人が男性5820人・女性136人、血友病Bの人が男性1296人・女性49人いると報告されている(2024年時点)。
男性に多い理由
統計の数字からもわかるように、血友病は男性に多いのが特徴。この理由は、⾎液凝固因⼦を作り出す遺伝子が、性別を決める性染色体の「X染色体」の中にあると考えられている。
⼥性はX染⾊体を両親から1つずつ受け継ぐため2つあり(XX)、そのうちの1つのX染色体に⾎友病の原因となる遺伝⼦変異があったとしても、特徴が現れにくい。
もし、家族に血友病の人がいたら、その⼥性は「保因者」となる。保因者は⽇常⽣活に⽀障がないことがほとんどだが、出⾎しやすい傾向にある人もいる。そうした人は、月経の量が多く長いといった不調を持つ場合があり、ケガや分娩、⼿術などの際には⾎友病の人と同様の⽌⾎管理が必要になることもある(白幡聡、福武勝幸(編)「みんなに役立つ血友病の基礎と臨床 改訂第3版」(医薬ジャーナル社), 2016年)。
⾎友病かどうかは、家族歴と⾎液検査によって診断できる。
見えにくい「内出血」が多い
血友病は、出⾎に伴ってさまざまな症状が現れる。症状は体の場所や程度によって異なるが、目に見える出血だけではなく、「内出血」が多いことが特徴だ。
中でも特に注意が必要なのは、命の危険を伴うこともある頭部の打撲などによる「頭蓋内出血」だ。転びやすい子供は特に大人の注意が必要となる。
ほかにも、肘・膝や⾜⾸などの関節内や、筋⾁内は出⾎しやすく、出⾎すると熱を持って腫れ、強い痛みが出ることがある。
さらに、同じ関節で出血が繰り返されると、関節が変形して曲げ伸ばしがしにくくなる。進行すると関節を動かす際に痛みを伴うようになり、日常生活に支障をきたすことがある。
薬の進歩により、現在では日常生活において大きな制限を受けずに過ごせるようになってきているが、一方で、生活を送るうえでの次のような悩みや不安が残されているようだ。
・学校や職場で説明する際の悩みを抱えている
・運動や遊びの際、転倒や強い衝撃で出血が起きることがある
・階段の上り下りや重い荷物を持つと関節への負荷で痛みや腫れが出やすい
・歯科・手術の際に出血が止まりにくい可能性があり医療を受けるのに慎重な選択が必要
・子供のケガの不安
裏を返せば、周囲の人たちが、病気のことやこうした困りごとについての理解を深めることが、当事者の助けにもなる。
また、生活に注意は必要ではあるが、薬の進歩などにより、以前より制限の少ない生活を送ることができるようになってきていることも知っておきたい。
治療や日常の活動制限は?
さらに理解を深めるために、当事者の治療や、日常生活の活動の制限について掘り下げていこう。
【どんな治療を行うの?】
⾎友病は多くの場合幼少期に診断されることが多く、治療は⽣涯続く。
日常生活の中での⾎友病の治療の基本となるのは、製剤を注射し、不⾜している⾎液凝固因⼦を補う「補充療法」となる。補充療法は場面によって異なり、次の3つに分けられる。
・出⾎が起こった時に注射をする「出⾎時補充療法」
・出⾎の可能性が⾼い⾏動(運動会や遠⾜など)の前に予防的に注射をする「予備的補充療法」
・出⾎の有無にかかわらず定期的に注射をする「定期補充療法」
注射は医師に限らず、血友病の人自らが行ったり、家族が行ったりする。当事者とその家族の人たちには、⾃分たちで製剤を注射する⾏為(在宅⾃⼰注射)が認められており、⼩学校⾼学年になると練習を経て⾃分で注射ができるようになる子供もいる。
なお、国や自治体が医療費助成制度を設けており、制度を利用することにより自己負担なく治療を受けられる。
【運動や旅行など、日常生活の制限は?】
運動については、⼈と激しく接触するような出⾎リスクが⾼いスポーツについてはあまり推奨されないものもあるが、基本的にやってはいけないスポーツはない。むしろ、⽔泳や卓球、ウォーキングなどの関節にやさしいスポーツは積極的に行うことが推奨されている。
主治医に相談のうえ、製剤を携帯し必要時に注射することができれば旅⾏も可能となるケースもある。
知ることが支援につながる
現代では、血友病は、正しい理解と治療があれば、日常生活や将来の選択肢を大きく制限するものではなくなっている。
こうした理解を広げることで当事者も言い出しやすい雰囲気ができ、まわりの支援を得やすくもなる。知ることが、当事者と家族の支えにつながる。
2025年3月に創業100周年を迎えた中外製薬は、血友病などの希少疾患の理解を広めるコンテンツを応援しています。
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