世界フィギュアスケート選手権が3月22日から開幕する。

昨シーズンは北京五輪代表を逃し、失意に沈んだ三原舞依。

今シーズンは数々の逆境を乗り越え、2度目の世界選手権代表を勝ち取った。その切符を手にするまでの道のりや今抱く思いを聞くと、三原はファンや自身をサポートしてくれた人たちに「感謝を伝えたい」と語った。

6年前、感動のフリーで5位まで巻き返す

「すごく楽しみで、“世界選手権”って文字を見るたびにちょっとウルッとしちゃうような。そんな嬉しい舞台なので、今はすごく楽しみにしている」

そう話す三原が、初めて出場した世界選手権は6年前の2017年。

2017年に出場した世界選手権、フリーの演技は感動を呼んだ
2017年に出場した世界選手権、フリーの演技は感動を呼んだ
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ショートプログラムでミスがあり、15位でスタートした三原は、フリーの『シンデレラ』で圧巻の演技を披露。会場は大歓声に包まれ、総合5位まで巻き返した。そのときの演技は感動を呼んだ。

今年は「ショートもフリーも最高の演技を!」と意気込む三原。特に、ショートには特別な思いが込められているという。

インタビューに応じてくれた三原舞依
インタビューに応じてくれた三原舞依

「最初のポーズから最後のポーズまで、一瞬一瞬を自分の人生を振り返りながら滑っているんですけど、最初から徐々にパッて最後のステップまで盛り上げていくところを、特に自分の人生と重ね合わせながら滑っています」

今シーズン、コンスタントに試合に出続けている三原。

「次の試合に向けて短時間で調整していくことができていて、空いてしまうと感覚が狂っちゃうこともあって、出られる試合は出たかった」と、世界選手権が目前に迫る中、3月11日から12日かけて地元神戸で行われたフリースケ―ティングのみの競技会に出場した。

それでも試合に出続けることは体力的に厳しい部分もあるようで「自分の体は自分でコントロールするしかない。試合のときまでコントロールしてうまく調整できたら」と気を引き締める。

中野園子コーチから“集中力の天才”と言わしめるほど意欲的に練習に取り組む
中野園子コーチから“集中力の天才”と言わしめるほど意欲的に練習に取り組む

三原のコーチを務める中野園子さんは「とにかく上手な人に追いつこうという意欲がすごかった。彼女には人にはわからない体との戦いがあって、疲れやすかったり、練習もできない日がある中で、集中力でパワーを必要以上に出してしまう。(去年は五輪を逃して)彼女も折れそうになって『できるんじゃない?』『いけるんじゃない?』って一生懸命言い続けています。あなたは天才だから、“集中力の天才だから”って」と話した。

「自分のスケート人生はジェットコースター」と言うほど、自身の“体”との戦いも続けてきた彼女は、ここまで波乱万丈のスケート人生を歩んできた。

「人生と重ねている」ショートでガッツポーズの演技連発

2015年に若年性特発性関節炎を発症し、入院。全身のあらゆる関節に痛みが伴う、1万人に1人の難病と闘った。

さらに2019年には体調不良により、全試合を欠場。試合に出ることすら叶わない、歯がゆい思いを何度も味わってきた。

オフシーズン、リスタートをしたトロントで取材に応じてくれた三原
オフシーズン、リスタートをしたトロントで取材に応じてくれた三原

今シーズンを迎える前のシーズンオフ中、三原は「(振付師に)『病気のときどんな感じやったん?』と聞かれて。全部の関節が痛くて、っていう話をしたら、振り付けの一部にそういった部分が入っていたり、それを乗り越えて最後は思いを出し切るんだ、ということを振り付けに込めてくれました」と語っていた。

「自分の人生と重ね合わせながら滑っている」ショートの『戦場のメリークリスマス』の膝を押さえるシーンは、闘病生活の中、関節が痛かった時期を表現しているという。

ショートの演技一つ一つに三原の“人生”が表現されている
ショートの演技一つ一つに三原の“人生”が表現されている

そのショートで、今シーズンはガッツポーズの演技が連発。

GPシリーズ2戦、初めてのGPファイナルで優勝し、全日本選手権では2位表彰台にのぼった。

2022年の全日本選手権で笑顔を見せる三原
2022年の全日本選手権で笑顔を見せる三原

ショートで大きなミスをすることなく良いスタートを切り、すべての試合で200点を超える安定感をみせる三原。

確かな自信を持って挑む、6年ぶりの世界選手権は、日本開催の特別な一戦だ。

「感謝」を1回でも一瞬でも多く伝えたい

シーズンベストは坂本花織に次ぐ、2番手。三原も世界女王を目指せる位置にいる。

そんな三原は、世界選手権への思いをこう語った。

世界選手権への思いを語る三原
世界選手権への思いを語る三原

「山あり谷ありというか、谷の方が多かったかなって思う。たくさんの方々のサポートのおかげで、こうして今もスケートができていると思うので、その感謝を1回でも多く、一瞬でも多く伝えられるように、一瞬一瞬を大切にして滑れたら良いかなと思います」

世界選手権の切符を手にするまでの6年間は、「いろいろなことがあったけれど、『シンデレラ』のプログラムを滑っていた自分に言ったら、どんな反応するのかなって考えたときもありました。6年経ったことも驚きですし、6年しか経っていないのかという矛盾した感情もあります」と振り返った。

「心は強く、芯を持って臨みたい」と意気込む
「心は強く、芯を持って臨みたい」と意気込む

そして当時の自身と照らし合わせて「(初めての世界選手権は)シニアデビューの年で若々しい滑りでした。今年の世界選手権はその時より、重厚な深い演技ができると思うので、成長した部分とか演技で魅せるようになったことを表現したい。自分の体がどうなろうと、自分のやりたいことを最後まで滑りきりたい。心は強く、しっかり芯を持って臨みたい」と意気込んだ。

3月22日から開幕の世界選手権。女子は坂本花織、三原舞依、渡辺倫果、男子は宇野昌磨、山本草太、友野一希、ペアは三浦璃来・木原龍一組、アイスダンスは村元哉中・高橋大輔組が出場する。

世界フィギュアスケート選手権2023
3月22日(水)から4夜連続で生中継
https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/world/index.html

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班