世界フィギュアスケート選手権が3月22日から開幕する。
今大会に初出場する渡辺倫果。彼女の今シーズンは、飛躍の年となった。
トリプルアクセルを武器に挑む世界選手権に向けて、渡辺は「今シーズン、最高の渡辺倫果を見せられるように」と目標を掲げる。
「ダイオウグソクムシ」好きな趣味が話題に
2022年9月、ロンバルディア杯では、大技・トリプルアクセルを成功させ優勝する。
初出場のGPシリーズではスケートカナダで優勝。GPファイナルにも出場し、4位という結果を残した。
この記事の画像(13枚)12月の全日本選手権では12位という結果になるも、今シーズンの活躍が評価され、四大陸選手権、世界選手権をつかんだ。
全日本後、悔しさをにじませながらも「前を向いて、先の試合で良い演技ができるようにつなげていければ」と気持ちを切り替えた。
2月に出場した四大陸選手権は5位に。
大会前、コーチの中庭健介さんが四大陸で6位だったという成績に触れて、「(コーチを)上回る5位以内を目指す」と話していた。
そんな渡辺は深海生物「ダイオウグソクムシ」が好きだということもあり、その魅力を語った際には海外メディアでも話題になった。
スリッパもスマホケースも、大好きなダイオウグソクムシのグッズ。
ユニークな趣味を持つ彼女の世界選手権のポイントは「ショートで集中すること」。
焦らず落ち着いて、ショートで集中
「ショートが自分の中で大切になってくる。トリプルアクセルを失敗しても、次のトリプルルッツ+トリプルトゥループに影響しないようにしないといけない。
それがないように練習からアクセル、ルッツをひとくくりにしていくことが大事。あとは焦らず、落ち着いて」
今シーズンからフリーだけでなく、ショートでもトリプルアクセルに挑戦している渡辺。
しかし、フリーでは15回中7回成功しているジャンプが、ショートは9回挑戦して成功したのは1回のみ。
ショートとフリーでは、トリプルアクセルを跳ぶまでのアプローチや軌道が違うため、苦戦しているという。
世界選手権に向けての練習に渡辺は、「振り付けの手直しをして、自分が滑っている感覚も非常に滑りやすい。動きが大きいので、その分負担はありますが、自分が満足する動きができている」と話した。
「武器にもなるが、マイナスになることもある」と語るトリプルアクセルに、なぜ渡辺は果敢に挑戦するのだろうか。
何事においても「挑戦すること」をし続けてきた
「スケートをする中で挑戦し続けることを、スケート以外においても小さい頃からやってきました。母から『挑戦を止めることだけはしないでほしい』と言われていたので、その教育のおかげです。
トリプルアクセルに挑戦し続ける理由としては、『自分のプライドが挑戦を止めることを許さないから』が答え」
そう強く語る渡辺は、フィギュアスケートにとっても、自分にとっても「挑戦する」ということは「切っても切りたくないもの」だとした。
だからこそ、大技に挑む渡辺は、世界選手権での「ショート、フリーともにノーミスの演技で終えること」という目標を達成するカギも、トリプルアクセルだと話す。
「今シーズン、スケートカナダが一番満足な大会ですが、ショートやフリーのアクセルも完璧というのはまだあと一歩足りない状態。(世界選手権は)今シーズン最後の大会になるので、ノーミスの演技をして満足のいく形で終えたい。
ショートでトリプルアクセルを成功させたのは、GPファイナルのみ。ショートから出遅れないように、ノーミスの演技をすることが自分の中で(トリプルアクセル成功の)カギになる」
初めての世界選手権に向けて渡辺は「自分を見失わないように、この場にいること、出場できていることを誇りに思って。ただ初心を忘れずに強い気持ちで世界選手権という舞台に立ちたい。6位以内には入りたい。今シーズン、最高の渡辺倫果を見せられるようにがんばります」と意気込んだ。
実力者そろう海外勢、女子4選手を紹介
海外からも実力者たちが、さいたまスーパーアリーナに集結する。
渡辺が入賞するためにライバルと言えるのが4人の選手だ。
ルナ・ヘンドリックス(ベルギー・23歳)は6大会連続6回目の出場で、坂本花織や三原舞依にとってもライバルとなる。
2022年の世界選手権でベルギーに「シングル史上初」のメダルをもたらした。柔軟な体から繰り出される“柔らかすぎるI字スピン”、タノジャンプが持ち味。
質の高いジャンプと全身を使ったダイナミックな表現で出来栄え点を稼ぎ、完成度で勝負するスケーター。
昨シーズン、GPイタリア大会で3位となり、ベルギー女子で初めて表彰台にのぼり、頭角を現した。
今シーズンもベルギー史上初のGPファイナル3位に入る。優勝候補として挑んだ1月の欧州選手権では、ジャンプのミスに泣き2位に。重圧を乗り越え、去年を超える成績を得られるか。
初出場となるのは、イザボー・レヴィト(アメリカ・16歳)。
伸びやかなスケーティング、柔らかい関節を活かしたスピンなどが持ち味で、3回転ルッツ+3回転ループという難しい連続ジャンプを跳ぶことができる。
15歳で全米女王に輝いた彼女は、今シーズンシニアデビューを果たし、GPシリーズ2戦に出場してともに2位表彰台。ファイナルでも2位と、シニアでも戦えることを証明した。
さらに全米選手権ではショート、フリーともに1位で優勝。アメリカの新エースとなった。2月の四大陸選手権では、ショート2位と好発進するも、体調不良で演技直前に棄権。
彼女にとって世界選手権デビューとなる今回、武器の3回転ルッツで表彰台を狙う。
2大会ぶり2回目の出場となる、キム・イェリム(韓国・20歳)。
170センチの長身で、両手を挙げて跳ぶ“超高い”3回転ルッツが代名詞だ。大舞台では不安定さが目立っていたが、2021年の韓国選手権の優勝を機に躍進する。
2022年には北京五輪代表にも選ばれ、今シーズンはGPNHK大会で坂本らを抑えて優勝。GPファイナル進出の快挙を成し遂げた。
2月の四大陸選手権では優勝を逃し、銀メダルで2年連続の表彰台。2度目の世界選手権となる今回は「ミスをしたくない。ショート、フリーともにクリーンな演技を」と話した。
イ・ヘイン(韓国・17歳)は3大会連続3回目の出場。
ダイナミックな滑りが持ち味の17歳。今シーズンはGPシリーズ2戦ともに4位で、1月の韓国選手権では3位表彰台。2月の四大陸選手権ではショート6位から、フリーでシーズンベストを更新する141.71点を出し逆転優勝した。
韓国代表としてキム・ヨナ以来、史上2人目の偉業を達成。世界選手権では「クリーンな演技がしたい。ステップとスピンでレベル4を獲得したい」と語った。
3月22日から開幕の世界選手権。女子は坂本花織、三原舞依、渡辺倫果、男子は宇野昌磨、山本草太、友野一希、ペアは三浦璃来・木原龍一組、アイスダンスは村元哉中・高橋大輔組が出場する。
世界フィギュアスケート選手権2023
3月22日(水)から4夜連続で生中継
https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/world/index.html