10月6日からウズベキスタン・タシケントで開幕する、2022世界柔道選手権。

女子48キロ級の角田夏実は、去年の世界選手権で初めて金メダルに輝いた。

そんな彼女を世界の頂点へと導いたのが関節技だ。そのルーツは、大学生の頃に学んだグラップリングという競技が関係していた。

関節技の鬼

2021年6月の世界選手権で角田は、初の“世界女王”に輝いた。

彼女を世界の頂点にまで押し上げた必殺の武器が極めて、極めて、極めまくる関節技だ。

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関節技に磨きをかける彼女の姿から付いた異名は“関節技の鬼”。

この技の礎を築いたのは、大学生の頃に学んだグラップリングという競技だった。

「柔道の寝技よりしんどい」と息を切らしながら角田が習得していたグラップリングは、打撃のない寝技主体の格闘技のこと。

相手の服を握ることができないため、体全体で相手を抑えなくてはならない。

「(柔道は)基本、道着を持っちゃえば相手は手が抜けないとかあるんですけど、グラップリングは体重の掛け方次第なので。1個抑えておくと相手が逃げられない。逃げ道を絶っておけばいいかな、みたいな」

グラップリングは手先だけに頼らず体全体で抑え、相手に逃げ道を与えない。この競技で学んだ体の使い方が角田の関節技を際立たせているのだ。

そんな唯一無二の武器をもつ彼女は2019年に、52キロ級から48キロ級に階級を変更。

その決意の裏には、階級を変えてまで、どうしてもいきたい夢舞台があったからだ。

「今回の東京五輪に出られそうで出られなかった。でも、五輪には階級を変えてまで出たいと思った。手が届きそうで届かないものほど欲しくなる、じゃないですけど。世界選手権でしっかり勝って次の大会に繋げていきたいと思います」

今年4月の体重別選手権の決勝では、東京五輪銀メダリストの渡名喜風南と初めて対戦した。

同じ階級で頂点を争う渡名喜の印象を角田は「すごく強い選手です。(渡名喜には)隙が全くなくて、試合をどう組み立てていくかを考えて、対策を練って試合に挑んだんですけど。試合中に隙がなさ過ぎて、自分の組み立ててきたものが出し切れませんでした。隙がなかった」

何度も「隙がなかった」と繰り返し、渡名喜の強さを肌で感じた角田だったが、試合中の彼女はなぜか笑っていた。

その理由を角田はこう語る。

「やっぱり、楽しい。強い選手と試合ができることはすごく楽しい。試合中も楽しくて、今まで自分が研究して対策してきたことを試して、でもしっかり渡名喜選手にそれを対応されて。それが何回も続くと、『うわっ、どうしよう、次何しよう』っていう、緊張とちょっと不安もあるんですけど、“次は何しよう”っていう楽しさもあって。その辺でたぶん笑みがこぼれたのかなと思います」

結果、渡名喜に負けてしまったが、角田は強い相手と対戦するのはワクワクするのだという。まるで漫画『ドラゴンボール』の主人公、孫悟空のようだった。

実はケーキ屋さんになりたかった

角田は今年、30歳になった。

高校卒業後、ケーキ屋になることを目指していた角田だったが、偶然その年に始まった東京学芸大学のセレクションに誘われたことで、東京学芸大学へ進学し、大学までと決めて現役を続行した。

大学最終年には選抜出場も果たし、柔道そのものも楽しくなった。その後、了徳寺学園の職員となったため、現役を続行できることに。

しかし、大学卒業間際にケガをしてしまう。そのため、了徳寺に入ってもケガの影響で2年を棒に振ってしまう。2017年には「今年だめならクビ」という状況の中で、見る見るうちに躍進。

同年、52キロ級で世界選手権の銀メダルを獲得、昨年は48kキロ級で“世界女王”というシンデレラストーリーを持っている。

そんな角田が目指すのは、やっぱり「五輪」だ。

「東京五輪が一番、目標だったんですけど…。そこに出られなくて、それでもやっぱりオリンピックのすごさを知って。ここまで頑張ってきたんだったら出たいっていう思いがあります」

決意を新たにする角田だが、「柔道が好き」という気持ちと、「引退」という気持ちが揺れていたと語る。

「(東京五輪を経て)やっぱり柔道好きだなって思いました。試合に出るも出ないも、今後ずっと柔道には携わっていきたいなっていう思いがすごい強くなって。今までは『やっぱり疲れて大変だから、東京五輪が終わったら、出れても出れなくても、そこで引退したい』っていう気持ちはけっこう強かったんですけど。

でも、辞めるとなると、辞めれないんですよね。今辞めたら、絶対後悔するなっていう思いもあって。もし勝てなくなってきても、たぶん私はずっと柔道してるんだろうな。『年取ってもやってそう』って、周りにも言われるんです。自分でも最近すごくそれに納得しています」

柔道への思いを強くする角田に、「生まれ変わっても柔道をやりたい?」という質問を投げかけると、「柔道は好きなんですけど、柔道していて悩むこともいっぱいあって。女子として、女として。もうちょっと女の子らしいスポーツをしてみたかったっていうのはあります」と笑った。

今回の世界選手権では、渡名喜も出場する。“世界女王”の座を再び手にできるか、注目だ。

2022世界柔道選手権
10/6開幕!
フジテレビ系列で8夜連続中継!
https://www.fujitv.co.jp/sports/judo/world/index.html

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