10月6日からウズベキスタン・タシケントで開幕する、2022世界柔道選手権。
その48キロ級で5年ぶりの世界女王奪還を見据える選手がいる。
東京五輪銀メダリストの渡名喜風南(となきふうな・27)だ。
この記事の画像(7枚)渡名喜が初めて世界女王となったのは2017年、当時22歳だった。
前年までの国際大会で2年連続負けていた相手を破っての金メダルだった。
「ちょっと印象深いというか。結構、他の試合は忘れているんですけど、あれは割と覚えていますね」
しかし、その後の世界選手権は決勝まで進みながらも、あと一歩が届かなかった。
「自分が投げたいという気持ちが強くなっちゃって、やっぱりそういう部分で冷静な判断ができないですね」
恐れていた事が、夢にまで描いた東京五輪でも再び現実になる。念願の夢舞台でもまた、渡名喜は銀メダルだった。
世界一になるために必要な“冷静な判断”
頂点へのあと一歩、それだけが届かない。
所属であるパーク24の園田隆二女子監督も金メダルの近道は「冷静な判断」だと語る。
「冷静さを。特に、決勝に上がったから、準決勝だから、1回戦だからということよりも、“自分の持っているものをどうやって出していくか”ということに今後はシフトチェンジしていくと思うんです。経験をうまく世界選手権で出してもらえれば、当然金メダルに1番近いと思っています」
日本の48キロ級は猛者ぞろいだ。
去年の世界選手権決勝では、角田夏実が金メダル、古賀若菜が銀メダルと日本勢で世界の頂点を競い合った。
そして、今年4月の全日本選抜体重別選手権。
落ち着いた試合運びで角田、古賀を抑え、初優勝を飾ったのは、ほかならぬ渡名喜だ。
「割と冷静に、多分一番冷静にできたんじゃないかなって思いますね、自分でも」
世界屈指の日本48キロ級を、貫録漂う戦いで圧勝して見せた渡名喜は、ワンランク上の強さを見せつけた。
リベンジではなく新たな挑戦
東京五輪から一年が過ぎた今、渡名喜は先を見据えたプランを描かない。大きな目標は、目の前の一つの試合の先にあることを改めて悟ったからだ。
「東京五輪のリベンジは、東京五輪でしかリベンジできない。この世界選手権はリベンジではなく、単純にパリ五輪というひとつの大会に向けてのスタートかなと思います」
週に2回、彼女が行うウエイトトレーニングは、他のアスリートが妥協してしまうほどきついというバイクトレーニングを自ら進んで行う。
渡名喜を見るトレーナーは「すごくストイックで、こちらが『やりなさい』と言わなくても自然とやっていたり、家でも実施してくれて。本当にまっすぐでストイックな選手。自己認知力がすごく高くて、私が指導したときに、うまく彼女の中で感じて、自分の感覚として動作をしていくところが、他の選手とはかなり違うところかなと思います」と絶賛する。
トレーニングが終わると、渡名喜は決まって倒れこみ、しばらく動けなくなる。
「試合は自分的には、常に全部の試合が挑戦。東京五輪って東京五輪しかないので、パリ五輪とはまた違うと自分の中では考えている。パリ五輪での優勝というか、そこが挑戦という意味かなと思いますね。リベンジはできないと思うので。東京は東京でしかリベンジできないと思います」
過去は過去。振り返らない渡名喜にとって、今年の世界選手権は「リベンジ」も「リスタート」も適さない。
目の前の勝利を冷静に確実に勝ちに行くだけだ。
フラットでシンプルな「出発」。世界一を目指した渡名喜の新たな戦いが、幕を開ける。
「あの当時(2017年)はあまりチャンピオンという気分を味わなかった。今回はしっかり“渡名喜がチャンピオンだぞ”みたいなのがあるかなと思っています」
2022世界柔道選手権
10/6開幕!
フジテレビ系列で8夜連続中継!
https://www.fujitv.co.jp/sports/judo/world/index.html