食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。
植野さんが紹介するのは「生春巻き」。
葛飾区・堀切菖蒲園にあるベトナム料理店「フォーおいしい」を訪れ、透き通る皮に海老と野菜の食感が際立つ一品を紹介。
日本で店を構え、困難を乗り越えながらも「本当のベトナム料理」を届け続ける店主の思いと、温かな味わいに触れる。
町中華の聖地・堀切菖蒲園のベトナム料理店
植野さんがやってきたのは京成線で上野から15分ほどの堀切菖蒲園駅。駅周辺には昔ながらの町中華が軒を連ね、安くて旨い「町中華の聖地」と呼ばれている。
2024年に移転したベトナム料理店「フォーおいしい」は、京成線・堀切菖蒲園駅から徒歩2分の場所にある。

ベトナムの雑貨が飾られた店内は全部で55席。家族連れでもゆったりと本格ベトナム料理を楽しめる。
店内には数々の色紙が飾られており、人気俳優もその味に魅了されて通い続けるなど、知る人ぞ知る店だ。
そんな店の店主は、ベトナム・ホーチミン出身のザン・フォンさん。ベトナムの家庭料理を大切にしながら、毎日通いたくなる「おいしさ」を追求している。客を大切にするフォンさんだからこそ辿り着いた「おいしい」が、ここにある。
突然の病魔も周りに支えられて
「日本で働きたい」という夢を叶えるため、26歳で来日したフォンさん。ベトナム出身の夫と日本で出会い結婚。子宝にも恵まれ、育児に専念していたが、日本で暮らすうちに「もっと日本の人に、本当のベトナム料理を食べてほしい」と自分の店を持つことを決意。

昼は銀座の和食店、夜はベトナム料理店で5年修業し、2015年、小岩に念願の店「フォーおいしい」を開店した。
植野さんから、ベトナム料理の味の原点を聞かれると、「もともと、お母さんとおばあちゃんは料理上手。(2人から)料理の勉強をしました」「みんな食べて喜んでくれるから、すごく嬉しいです」とフォンさん。

すぐに店は軌道に乗り、フォンさんの料理の味を求めて連日多くの客が通うように。ところが2024年、フォンさんに突然の病魔が襲う。脳梗塞で麻痺が残るかもしれない不安を抱えた。
フォンさんは「もう店売ろうかな、やれないかなと思った。でもいつも応援してくれるお客さんと子供のために(店を)やろうかなと思って」「子供たちも“ママ頑張って”と言ってくれて」と当時の思いを語った。
次女のチャウさんも母の負担が少しでも軽くなればと店を手伝うように。家族と常連の愛に支えられ、今年で11年。「フォーおいしい」の第2章はまだ始まったばかりだ。

本日のお目当て、フォーおいしいの「生春巻き」。
一口食べた植野さんは「野菜のフレッシュな食感と肉やエビの旨味が入って、タレが全部をまとめてくれる」と感動。
フォーおいしい「生春巻き」レシピを紹介する。
