Xの関与・アリバイのない信者たち

・教団の“諜報大臣”こと井上嘉浩が犯行当日、事件が報道される10分前にあたる午前8時36分より前(推定時刻午前8時35分頃)に「X巡査長から電話があり事件発生について聞いた」と供述した(*第12話-2参照)。事件が報道される前にXが事件について知っていた可能性があることがわかった。

・事件発生直後の3月30日午前9時40分、テレビ朝日に入った脅迫電話の声について教団幹部の矢野隆が教団信者の金子牧男(仮名)の声に似ていると供述したことから声紋鑑定を実施したところ、金子の声に酷似しているとの鑑定結果が出たこと。金子の両親も金子の声であると証言した。(*第11話参照

オウム真理教の井上嘉浩元死刑囚
オウム真理教の井上嘉浩元死刑囚

・96年5月、Xは「自分が撃った」と自供。98年から2002年にかけXは事件への関与を否定していたが、2004年には「島田さん(仮名 教団幹部“東信徒庁長官”)に依頼され犯人の逃走を支援するため現場に行った」と再び関与を認めるようになった。また事件当日の朝、「ガフヴァなんとかというホーリーネームの男」に似た男(※オウム信者の端本悟元死刑囚に似た男)が車で迎えに来て、現場には早川(早川紀代秀元死刑囚 教団幹部“建設省大臣”)のような男と、矢野隆(仮名 教団幹部“防衛庁長官”)の姿もあった。その後、車で待機しているとバタンという音と共に後部座席に乗り込んできた男は、朝迎えに来たホーリーネーム「ガフヴァ…」の男で、運転手と「上手くいった。当たりました」との会話があったと供述している(*第38話-2参照)。

オウム真理教の端本悟元死刑囚
オウム真理教の端本悟元死刑囚

・現場のアクロシティで複数の住民が実行犯とおぼしき人物について端本の容姿に似ている男や眼鏡をかけた男であることを証言した。犯行前日の夜には南千住署署長公舎を覗き見る不審な男の目撃者は男が端本であったと証言している。

・X、端本、早川、矢野の犯行当日のアリバイが立証されていない。

Xのコートに空いた穴

・Xが犯行当日30日午後、菊坂寮(東京・文京区)近くのクリーニング店に出した灰色コートから拳銃発射時に生じたとみられる溶融穴が見つかった(*第35話-2・3参照)。

コートの分析で使われた施設「スプリング8」
コートの分析で使われた施設「スプリング8」

・Xのコートの溶融穴から拳銃発射時に生じる鉛、チタン、アンチモンが結合した状態のいわゆる火薬残渣物が発見された(*第35話-2・3参照)。

・Xのコートから見つかった火薬残渣物と長官銃撃事件現場の射撃位置から見つかった火薬残渣物を比較した結果、完全一致とは断定できなかった。

早川の車 義兄の車 不審者情報 アイビス

・犯行当日30日午後3時36分から午後3時46分にかけ、早川専用車がXの寮やXがコートを出したクリーニング店近くを走行したことが自動車ナンバー読み取り装置(AVI)の記録により確認された(*第30話参照)。

・Xが事件数日前、双眼鏡(*第16話-3・4)を使って下見したことを供述し新聞配達員の目撃証言(*第6話-3 目撃情報H参照)と一致した(*第19話-1参照)。

・事件数日前、現場付近で新聞配達員により「エスティマ・ルシーダ」に似た車が不審車両として目撃された(*第6話-4 目撃情報I参照)。

トヨタ・エスティマ「ルシーダ」はナンバーがバンパーに取り付けられている
トヨタ・エスティマ「ルシーダ」はナンバーがバンパーに取り付けられている

Xが義兄の車「エスティマ・ルシーダ」を犯行数日前に借りていたことが確認された。

「自分の名刺を出した」Xが明かした職質の現場か…警察官による状況の再現(捜査資料より)
「自分の名刺を出した」Xが明かした職質の現場か…警察官による状況の再現(捜査資料より)

・Xが下見の際に警察官の職務質問を受け自分の名刺を出したと自ら証言(*第18話-1・2参照)。警察官を名乗り、名刺を出してきた人物に職務質問をした警察官が現れた。この警察官証言はX供述と符合した(*第34話参照)。

六本木のホテルアイビス(東京・港区)
六本木のホテルアイビス(東京・港区)

・事件前の3月27日、六本木のホテルアイビス777号室を教団幹部の島田理恵子が本人名で予約したことが確認された。島田はこの日、在家信者と連絡するためアイビスを予約したと供述。同じく27日、教団幹部の矢野隆は警察庁出身だった内閣情報調査室長の名前を井上嘉浩に聞いていたことが井上供述から判明。井上は青山ブックセンターで売っている警察官僚という本にその名前が載っているとアドバイスしたことも証言。そのアドバイス通り矢野が27日青山ブックセンターに行っていたことが矢野が持っていたレシートから確認された。27日から28日未明にかけ、矢野がタクシーでホテルアイビスの裏で降りたこともレシートから判明(*第11話参照)。

一方、27日朝、教団幹部の早川紀代秀が井上嘉浩にXのポケベル番号をたずねたことも井上供述から明らかになった。この日の朝、長官事件があったアクロシティでは不審者が住民に通報されていたことから、現場での下見が上手くいかないことを憂慮した早川、島田が警察官であるXに下見を依頼した可能性があることが浮上(*第39話参照)。

警察官が不審者に職務質問した“釣り宿の駐車場付近” 東京・荒川区
警察官が不審者に職務質問した“釣り宿の駐車場付近” 東京・荒川区

・3月28日早朝、事件現場近くの「釣り宿の駐車場」で警察官をかたる人物に職質したという別の警察官証言も出た。「築地特捜の者です」と名乗った人物が名刺は出さず警察手帳しか見せてこなかったことや、「レクがやりたいから釣り宿の電話番号を教えて欲しい」と言ってきたことからXの職質証言とは違うものと見なされた。この話をXが明かさなかったことから下見中のX本人への職務質問だった可能性が浮上した(*第34話参照)。

教団信者が事件直前、現場周辺の下見に動いていたことがわかり、それが長官銃撃事件の前兆だったのではないかと思慮されるに至った。ホテルアイビスは、島田、矢野、Xらによる謀議の場であった可能性があるとの見立てが有力視された。

麻原側近信者のメモ

加えて以下の点についても新たに判明した。それはある教団幹部信者のメモだった。