3月21日からカナダ・モントリオールで開催される世界選手権。

女子シングル代表として、世界選手権2連覇中の坂本花織、四大陸選手権優勝の千葉百音、GPファイナル3位の吉田陽菜が出場する。

女子フィギュア界では、56年ぶり史上8人目の大偉業となる世界選手権3連覇を目指すのが、坂本花織(23)だ。

世界選手権でフィールドキャスターを務め、坂本が“戦友”だという本田真凜が、神戸のリンクへ。最終調整を行う今の心境を語ってもらった。

アクセルの幅がえげつない

この日、朝7時頃眠い目をこすりながら現れた坂本。

急いで靴を履きながら準備を進めていると本田が現れ、喜びが爆発し、互いに笑い合う。

2人はジュニア時代からの“戦友”だという。

“戦友”だという本田真凜と抱き合って喜ぶ坂本花織
“戦友”だという本田真凜と抱き合って喜ぶ坂本花織
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「ジュニアになってからもう勝てないと思って。真凜がミスしないと本当に勝てないから。でも真凜に追いつきたい気持ちがずっとあったから、今もこうやって戦う気持ちを忘れずにできていると思う。

それがジュニア時代になかったら、シニアに上がってからも強くなれなかった。1番大事な時期に真凜と一緒にずっと戦えて、すごくよかった。いい戦友だなって。あと、シンプルに真凜が好き」

仲良く一緒にリンクで滑る坂本と本田
仲良く一緒にリンクで滑る坂本と本田

2人は同じ関西出身として、数々の大会に出場し競い合ってきた“戦友”であり、いまとなって坂本は、本田の大ファンだという。

そんな昔からお互いをよく知る2人だが、練習を見学した本田は「アクセルの幅がえげつない!昔からアクセルの質、他のジャンプも素晴らしくて、年々幅が増していると感じたのですが、何か意識していることはありますか?」と質問。

ジャンプの成長は中野コーチからのアドバイスが大きいと坂本
ジャンプの成長は中野コーチからのアドバイスが大きいと坂本

坂本は中野園子コーチらからのアドバイスを受けることで、ジャンプが進化していると語る。

「自分だけでやると、こじんまりしたジャンプになってしまうけど、先生に見てもらって『今のジャンプは小さかった』『大きかった』というのを1回1回言ってもらう。

それで『今のは、よかった』というのをインプットして、練習を積んでいく。それが生きてきて、年々幅のあるジャンプが、アクセルができているのかなと思います」

大人の曲も恥ずかしくなくなってきた

現在のコンディションについて尋ねると、坂本は「今、とにかくジャンプは全部跳べるという感じですが…。まだ足りないところがたくさんあるので、世界選手権まであと1週間ぐらいあるので、しっかりやりこんでいけたら」と話す。

リンクで練習する坂本の様子を見つめる本田
リンクで練習する坂本の様子を見つめる本田

リンクを貸し切り、みっちり1時間練習を行った坂本。

フリーの曲かけ練習ではノーミスで、好調をアピールした。

そんな坂本のフリースケーティングで、本田はお気に入りのパートがあるという。

フリー最後のポーズ前に膝で回転するシーンが本田は好きだという    
フリー最後のポーズ前に膝で回転するシーンが本田は好きだという    

「ちょっとマニアックかもしれませんが、最後のポーズまでの膝で回るところ。スケートというよりも体幹かな。しかも疲れているから大変そうだなと思って。

でも見ていてすごく好きなパートです。あれ、最初に振り付けで提案された時どう思いました?」

こう本田に問いかけられた坂本は「膝、もげると思った!」と笑う。

「大人っぽい曲は初めてで、最初は不安でした。でも23歳になって、シニア7、8年目ぐらいになって、表現することが恥ずかしくなくなったからこそ、今こうやってできるのかなって思う。

それも自分の成長と共にどんどん良くなっていけたらなって思っている。その成長も1つの過程として見てもらえたら」

ノーミスは世界選手権に置いている

今シーズンはシーズン序盤から快進撃を繰り広げた坂本。

9月オータムクラシック優勝で弾みをつけると、GPシリーズ2戦で1位に輝き、初のGPファイナル制覇。

11度目の全日本では、圧倒的な強さで3連覇を果たし1年を締めくくった。

2023年の全日本で3連覇を成し遂げた坂本
2023年の全日本で3連覇を成し遂げた坂本

ここまでの好調ぶりを振り返ってもらうと、「これまでスタートダッシュが悪くて、(シーズン前半の)国際試合で勝てなかった。でも今シーズンは昨シーズン苦しんだ分、すごく気持ちがのっている試合がたくさんある。

それはすごく良かったなって思っている。試合に対して前向きに捉えて挑めていることが、自分にとっていい刺激になっています」と今シーズンは手応えを感じていると話す。

本田のファンだという坂本。インタビューは2人の思い出話も尽きなかった
本田のファンだという坂本。インタビューは2人の思い出話も尽きなかった

2024年を迎え、国民スポーツ大会、チャレンジカップに出場し、坂本は両大会ともに優勝。

年明けの2試合について坂本は「国スポも、チャレンジカップも公式練習から試合までの間がすごく短いことなど、滅多にない、イレギュラーなことがたくさんある。

それも1つの経験として踏まえて、その時どうしたらいいのか、ということを考えながらやった。このタイミングでこの経験ができてよかった。

試合内容も良くはなかったんですけど、でもその良くなかったことが、次に向けての宿題になったと思う。『ノーミスはもう世界選手権に置いてあるんだ』と思って、その2試合はやっていました」と自信を見せる。

要素1つ1つを調整していった氷上練習
要素1つ1つを調整していった氷上練習

3連覇を達成した全日本を終え、ジャンプに限らずスピンやステップなど、1つ1つの要素で満点評価のプラス5に近い加点をもらうため、クオリティーを上げる練習に取り組んできたという。

今季スケーティングに磨きをかけ、理想のスケートを追求している坂本にとって、“ノーミス”は必須になってくるだろう。

「よっしゃっ!」と思える演技を

本田から「世界選手権ってどんな舞台?」と問われた坂本はこう答えた。

「シーズン最後だし、これでもかっていうぐらい、自分の持っている全てを出し切りたい試合。

コンディションはバッチリで、いつも『よし行くぞ!』という気持ちで、挑んでいます」

今回で5度目を迎える大舞台。去年、さいたまスーパーアリーナで行われた世界選手権は、連覇がかかったプレッシャーから緊張は倍増で、パニック状態だったという。

久しぶりの声援を受け空気に飲まれ、去年の世界選手権はパニック状態だったという
久しぶりの声援を受け空気に飲まれ、去年の世界選手権はパニック状態だったという

その経験を経た今の心境を、坂本は「やる気は十分。あとはしっかり、成績を残すだけ。気持ち1つでよくもできるしダメにもできるので、試合でどれだけ緊張してもよくできるように。

日々の練習が大事なので、今はやり込むだけやり込んで、悔いはないっていうぐらいまで練習して、世界選手権に挑めたら。自分も見ている人も『よっしゃっ!』って思えるように、全力で滑りきりたい」と笑顔を見せた。

終始、笑顔でインタビューに応じてくれた坂本
終始、笑顔でインタビューに応じてくれた坂本

弾ける笑顔で、はつらつと答えた坂本。

モントリオール開催の今回の世界選手権は、坂本にとって思い入れのある地だ。

「モントリオールは昨シーズンのフリーと今シーズンのフリーを作った場所でもある。

特に今年の振り付けの時は、『ここで最後、世界選手権が今シーズンあるから絶対帰ってきてね』と言われながら振り付けをしていた。

去年、実際に会場を外から見て、『絶対ここに帰ってくるぞ』って気持ちでやってきたので、もうあとはやるだけ」

今年の世界選手権は女子も強豪がそろう。

2023年の世界選手権表彰台
2023年の世界選手権表彰台

前回の世界選手権で女王・坂本を4点差までに迫った銀メダル、イ・ヘイン(韓国)。

そして世界選手権2年連続の表彰台、欧州選手権を制したルナ・ヘンドリックス(ベルギー)や、15歳で全米を制した新エース、イザボー・レヴィト(アメリカ)らが更なるパワーアップを果たし日本の前に立ちはだかる。

坂本が今回3連覇を達成すれば、女子シングル史上8人目56年ぶりの快挙達成だ。

この偉業に向けて「チャンスは今しかない、しっかり達成したい」と意気込む。

スピード感とパワフルなスケートで、坂本花織らしさを確立し、ゆるぎない強さで駆け抜けてきた中で迎える大舞台。彼女の演技に目が離せない。

世界フィギュアスケート選手権2024
3月22日(金)男女ショートよる7時~
3月24日(日)男女フリーよる7時~
https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/world/index.html

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班