3月21日からカナダ・モントリオールで行われる世界フィギュアスケート選手権。
その世界選手権で3連覇を目指すのが、宇野昌磨(26)だ。
そして、宇野の目標を達成すべく、恩師であるステファン・ランビエールがスイスから来日。
宇野は世界の頂点への激しい戦いを勝ち抜くため、ランビエールコーチとマンツーマンで5日間の集中トレーニングを実施した。
ステファンを満足させたい、という自己満足
今年の世界選手権は、強豪がパワーアップして集結する。
大技・4回転アクセルをショートでも組み込む“4回転の神”イリア・マリニンをはじめ、強力なフィジカルを生かし、今シーズン初の300点超をしたアダム・シャオ イム ファらによるハイレベルな戦いが予想される。
そして日本から、男子は宇野昌磨、鍵山優真、三浦佳生が出場する。
日本の世界一への道のりが険しい。宇野自身もそれを感じているからこそ、2月にランビエールとの5日間の集中トレーニングを行った。

まず得点源であるジャンプの感覚を体にたたきこむ練習からスタート。
続く、振付パートの練習ではプログラムの理解を深めつつ、ひとつひとつの所作がよりエネルギッシュになるよう体に染み込ませていく。
ランビエールは終始声を張り上げ、宇野を鼓舞する。

そんな宇野は、ランビエールとのハードな練習を楽しみにしていた。
「(世界選手権で)優勝できるように、最善を尽くしたい。
『ステファンと、世界選手権に向けて楽しくやる』と言うと軽く聞こえるかもしれないけど、ハードなトレーニングを、楽しみにしている」
2人の出会いは2019年、GPフランス大会で自己ワーストの8位になるなど低迷したころだった。
どん底にいた宇野は、スイスのランビエールのもとで指導を受けることを決意。
あたたかく受け入れ、支えてくれたランビエールのおかげで「また前を向いて練習できるようになった」と明かす。

ランビエールとの出会いで復活を果たし、2022年には初めて世界の頂点に立つ。
まさに、ランビエールなくして、いまの宇野は存在しないとも言える。
ランビエールの指導について尋ねると、「意外と厳しい。でも優しいし厳しい。なんでも受け止めてくれる。
僕もステファンにとって思い出に残るように、満足して欲しい。ステファンを満足させたい、という自己満足」と語る。
悪い日も良い日も、自分を信じて
そんな宇野は、集団行動を得意とせず、外食もほとんどしないことで有名。
だが、このときは自ら進んでランビエールを寿司でもてなした。

そして、食べ終わればすぐスケートの話に夢中になっていた。
ふたりは、いつもスケートに全力だ。
トレーニングの期間中、ミーティングを行ったランビエールと宇野。ランビエールから「世界選手権の明確な目標は?」と問われた宇野はこう答えた。
「結局、全部ではあるかな。競技だから、ジャンプが一番大事。ジャンプも点数になるように。優勝できるように、最善を尽くしたい。
かつ、このショート、フリーを、ステファンが望むものにしたい。点数にならない部分はたくさんあるけれど、それを全力で練習していきたい」

宇野の言葉を聞いたランビエールは「最後の一滴の汗まで、出し尽くして」と背中を押した。
全てを終え、ランビエールが宇野に伝えた言葉は、「自分を信じて。悪い日も、良い日も、自分を信じて」。
支えてくれた恩師・ランビエールへの感謝の気持ちを宇野は“全力”で表現する。
世界選手権を最高の試合にしたい
決戦の舞台まであと1カ月を切ったころ、宇野に話を聞くことができた。
過去2年とは「レベルが違う」と言っていた宇野。世界選手権が迫る今、何を感じているのだろうか。
「正直きついです。マリニン君の練習映像とかを、たまに見たりしますが、彼以上にジャンプの才能を持つ選手は金輪際現れないだろと思うくらいやばいです」

宇野であってもマリニンの4回転アクセルは「すごすぎる」ようで、「彼は自分がどれだけすごいことをしているのか自覚していない。本当に自覚した方がいい、自分が上手だってこと」と苦笑する。
「彼は本当に子どもっぽくて、すごくフレンドリーに僕に話しかけてくれます。
『次、どんな試合に出るのか』って目をキラキラさせて聞きに来てくれて。なんか僕も頑張んなきゃなっていう気持ちにもなります」

今シーズン最終戦となる世界選手権に向けて、宇野はこう語る。
「全力は出し切ると思います。でも笑顔で終わっていてほしいなって思いますね。表に立つ時間は有限だと僕は思っている。
僕自身が世界選手権が終わった瞬間や、1つ1つの試合の終わった後に笑顔でいてほしい。それが後々振り返った時にめっちゃ悪い演技でも、めっちゃいい演技でも笑い話とか自慢話になる。
悲しまなくてもいいだけの日々を送っていたんじゃないって、僕は思っています」
“自己満足”をテーマに掲げる今季。だがライバルの存在にいい刺激を受け、熾烈なトップ争いに挑む宇野昌磨26歳。
誰よりも自分を信じている恩師とともに立ち向かう、8度目の大舞台。
日本男子史上初の3連覇へ全力で挑む姿に目が離せない。
世界フィギュアスケート選手権2024
3月22日(金)男女ショートよる7時~
3月24日(日)男女フリーよる7時~
https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/world/index.html