家庭やオフィス、あらゆる場所にあるコンセント。その左右の穴に、違いはあるのだろうか。
視聴者から寄せられた「コンセントのプラグ、どちら向きに差しても変わらないの?」という疑問の真相を解き明かすべく、国内シェア8割を誇るコンセントやスイッチなどの配線器具を製造する主要拠点を取材した。
大正時代、電源供給は1家に1カ所だった
訪れたのは、三重県津市にあるパナソニックエレクトリックワークス社。配線商品技術部の加茂亮汰さんが案内してくれた。

製造工場では、徹底的に自動化された生産ラインが稼働。頭上をケーブルカーのようなマシンがパーツを運び、細かい砂粒を吹き付けてコンセントの穴を開けている。

高速組立マシンに至っては、1分間に480個、つまり1秒間に8個というスピードで製品を作り出している。
本題に入る前に、まずは日本のコンセントの歴史を紐解く。

時は今から約100年前の大正時代。家庭に電気の灯りが広まり始めた頃"経営の神様"として知られる松下幸之助が登場する。彼が最初に作ったのは、電気をより便利に使うための「アタッチメントプラグ」。当時はまだ「コンセント」という言葉すらなかった。
家庭の電気の供給口は天井に一カ所のみ。そのため、アイロンなどの家電を使うには、まず電球を外し、コードの先についたプラグを差し込む必要があった。「これだと、暗いところでしかアイロンが使えない状態」と加茂さん。
そこで発明されたのが「二股ソケット」である。電灯と家電を同時に使えるこの画期的なアイデア商品は大ヒットとなった。
そして昭和に入ると、壁に固定できる2つ穴のコンセントが登場。昭和の中頃には壁の中に埋め込まれ、現在私たちが使っている形が完成したのである。
左右で電流差に違いがあるが…
歴史を学んだところで、いよいよ本題。
加茂さんに「コンセントの穴は、右と左で違いはあるのでしょうか?」と尋ねると―
「はい、ございます」
コンセントの穴は左右で長さが異なっているが、違いは長さだけではないという。
「右側の小さい穴には100ボルト、左側の大きい穴には0ボルトがかかっていて、プラグを差し込むと、100ボルトから0ボルトの方に電流が流れます」(加茂さん)
電気の流れは水と同じで、高いところから低いところへと流れる性質を持つ。
ただ、家庭用のコンセントに流れてるのは「交流」で、電気の流れは絶えず入れ替わっている。そのため、プラグはどちらの向きに差しても電気が流れる仕組みになっているのだ。
精密機器はプラグにも左右差が
では、なぜ穴の長さに違いがあるのか。
加茂さんによると「日本の一般的なプラグは、プラグの刃が左右で同じなので、反対向きに差しても特に問題ない」が「精密機械等のプラグは左側が長く右側が短くなっているため、反対に差せないようになっている」という。
左右差があるプラグを無理やり差してしまうと故障の原因になる可能性があるため、コンセントの穴は安全性を考慮して作られているのである。
ちなみに、番組の音声スタッフによると「コンセントを左右入れ替えると、音のノイズが減ったりする時も確かにありますよ」とのことで、音響機器などでは向きが音質に影響を与えることもあるようだ。
最後に加茂さんに、コンセントを扱う上での注意点を聞いた。「異物を入れない、自分で分解しない、そして電気工事は資格を持つ専門家に任せること」
単純な見た目のコンセントだが、実はメーカー側の安全性への配慮が隠されていた。
