毎日使うトイレットペーパーですが、実は多くの人が肌触りの悪い「裏面」を使っているかもしれない。特にシングルには明確な「表裏」があることが、国内トップブランドへの取材で分かった。正しいトイレットペーパーの使い方からダブルとの違い、香りの秘密まで、知られざる真相に迫る。
親子でも食い違う“表と裏”
多くの人が毎日使うであろうトイレットペーパー。その向きを意識したことはあるだろうか。
街で聞いてみると、意見はさまざまだ。
ある親子は「(紙が垂れ下がって)見えない方を上にしてる」という娘に対し、母はというと…「私は、逆です」。親子でも意見が分かれた。
「いちいち、考えたことないなあ」「正解なんて、あるんですか?」という素朴な疑問も。
トイレットペーパーに「表」と「裏」はあった
だったら、作っている会社に聞くのが一番、ということで…真実を探るため、トイレットペーパーの国内トップブランド「大王製紙」の岐阜県にある可児工場を訪れた。
出迎えてくれたのは、紙の生産や加工を担当する現場のプロフェッショナルたち。
さっそくではあるが、核心に迫る質問を投げかけた。
「トイレットペーパーに『表』と『裏』って、あるんですか?」
この問いに担当者は、きっぱりと「はい、ございます!」
「シングルは、肌触りのよい“表面”が外側にくるよう製造しています」と教えてくれた。
つまり、1枚の紙でできているシングルのトイレットペーパーには、明確に表裏が存在するというのだ。
一方で、紙を2枚重ねたダブルの場合は、紙の裏面同士を貼り合わせているため、表裏どちらを使っても肌触りや吸水効果は同じだという。(製品により異なる)
知られざるエンボスの役割と地域ごとの特徴
トイレットペーパーの表面にあるデコボコ、いわゆるエンボス加工にも役割がある。
大王製紙の担当者によると「凹凸をつけることで紙に触れる面積が少なくなり、摩擦が減る。そうすることで表面性を柔らかくしたり、ふっくらして吸水力も上がる効果が見込めている」とのことだ。
ちなみに、シングルとダブルではどちらが人気かを問うと―
「国内の売上比率ではシングルが3割、ダブルが7割と、ダブルが圧倒的に人気です」
しかし、地域によって好みに違いがあるという。
東海エリアではダブルの人気が圧倒的なのに対し、関西や四国エリアでは人気は二分。北陸エリアでは、ダブル人気がやや高いというデータがあるそうだ。
巨大工場で地球2周分の長さを生産
今回、特別に巨大な工場の中も見せてもらった。
原料となるのは、広葉樹と針葉樹から取り出した繊維を漂白したパルプ。これをシート状にし、乾燥工程を経て大きな紙が作られる。
そうして出来上がったのは、巨大な紙のロールだった。
その大きさは、幅4メートル、直径3メートル、重さは5.6トンにもなるという。
普通のトイレットペーパーにすると、5万個分に相当する。このジャンボロールを小さくしていくことで、私たちが普段使っている製品になるのだ。
ジャンボロールは、紙の表側にエンボス加工を施した後、細い丸太サイズに巻き取られていく。その隣では、ロールの芯が製造されていたが、ここにも驚きの事実が。
「実は、トイレットペーパーの香りは、芯の部分に付けられているんです」と担当者。
トイレの心地よい香り空間は、芯によって作られていたのだ。
4メートル幅のロールは、商品サイズに高速で裁断。次々と誕生していく私たちが見慣れたトイレットペーパー。
「可児工場では、1日に160万ロールを製造しています。例えますと、全ての紙をつなぎ合わせたら、地球2周分の長さになります」
結論「トイレットペーパーに表裏はある」
工場で教えてもらった「シングルのトイレットペーパーには表裏がある」という事実を、街頭インタビューで出会った人たちに伝えると―
「もう30年以上間違ってました…」と苦笑する人や「あぁ、ありがとうございます。教えていただいて勉強になります」という人も。
身の回りには、まだまだ私たちの知らない「表」と「裏」の世界が広がっているのかもしれない。
