誰もが一度は潰して遊んだことがある、あのプチプチとした感触のシート。正式名称は「気泡緩衝材」という。
大切な物をこのシートで包む時、一度は迷ったことがあるのではないだろうか。
「どっちが表で、どっちが裏なのか?」
街の意見は真っ二つ
街で聞いてみると、さまざまな意見が―

「包む時、だいたい、こっち(凸面)を内側にして包む。こっち(凸面)が表、こっち(凹面)が裏」と話す人もいれば、「こっち(凸面)!ぷくぷくとしている方が表ですよ。こうやって包むから。ちゃうの?」と自信満々に話す人も。

しかし、いざ実際に包む動作をしてみると「ボコボコの方を…えっ?いや、違うか、ツルツルの方を…やっぱりこうか…もう分からんくなってきた…」と混乱してしまう人も少なくない。
そのまま調査を進めると、凸面を内側にして使うという意見が続々と上がってきた。

中には、「物を包む時は、こっち(凸面を内)だよ。でも緩衝材に使う時は、逆!」と、用途によって使い分けるというこだわりを持つ人もいた。
この疑問に終止符を打つべく、“その道のプロ”に話を聞くことにした。
プロに聞く、気泡緩衝材の「表」と「裏」
訪れたのは、福井・鯖江市に本社を構え、気泡緩衝材で国内業界トップクラスの実績を誇るプラスチック製品の総合メーカー「酒井化学工業」である。
対応してくれたデザイン部の松田菜美恵さんに、単刀直入に尋ねる。
「気泡緩衝材に、表と裏はあるんですか?」
「はい、ございます!」きっぱりと答えてくれた松田さん。「当社では『粒のある面』を『表』、『粒のない面』を『裏』と呼んでいます」
やはり、表裏は存在した。
松田さんの説明では、感触や見た目にも分かりやすいツブツブした面が「表」だという。
だが驚くべきことに、この定義は昔からあったわけではないという。
「最近、表と裏を気にされるユーザーが多いと感じていまして、そこで初めて『表裏』を決めました」と松田さん。
この決定に異論はなく、満場一致で決まったそうだ。
まさかの誕生秘話…偶然の産物だった
さらに、気泡緩衝材そのものの誕生秘話もまた、意外なものだった。
話は1950年代のアメリカに遡る。
もともとは“掃除しやすい壁紙”を作ろうとした際に、偶然できてしまったものだという。
「壁紙の紙にフィルムを貼る時に気泡が入ってしまい、それが壁紙としてはあまり売れ行きがよろしくなかったみたいなんですけど…」

ところが、これが一発大逆転の大ヒット商品に。
失敗から生まれた偶然の産物が、今や世界中で緩衝材として使われてるというのだ。
正解は「使い方次第」
では、正しい使い方はどちらなのだろうか。
「粒のある面『表』を内側にして使うことを推奨しています」と松田さん。
しかし、これが絶対の正解というわけではないという。「(包む)物によっては、表裏を使い分けることで、より効果を高めることができます」
例えば、漆器などの工芸品を包む場合、粒の跡が付かないように、ツルツルの「裏面」を内側にして使うことを勧めているという。
結局のところ、気泡緩衝材の表か裏か、その正解は「使い方次第」だった。
