佐藤さんは、2023年9月に、山中で子連れの母グマに襲われた一件を振り返る。遭遇の瞬間は距離が近く、とっさに大声をあげてしまったことで刺激してしまったのだろうか。クマは突進し、佐藤さんの腕と腿に噛み付いた。幸いほどなく離れて去って行った。

30年以上山菜採りを続ける佐藤さんが、これまで距離を置いて見かけたことはあっても、目の前での遭遇に至らなかった背景として、「常にクマ鈴を付けていたことも一因ではないか」と考えている。

「ラジオを流すという人もいますが、ラジオは自分には聞こえるけれど遠くまで届かないことが多い。遠達性を優先するなら鈴です。高音であれば尚いい」(佐藤さん)

さらに、「複数つけたほうがいい」と続ける。

幹に刻まれたクマの爪痕(イメージ)
幹に刻まれたクマの爪痕(イメージ)

「装着は腰回りが基本です。私は、収穫物を入れるカゴを腰に縛り付けたら、そこにぶら下げるような感じで付ける。やや長めに垂らして太腿に当たり、歩くたびに確実に鳴るようにします。2個付ければ鈴同士が当たり、よりはっきりと大きな音を立てます」(佐藤さん)

斎藤さんも、実際に、クマ鈴が遭遇回避に寄与したとみられる例を語る。

「山道で獣臭を感じ、鈴を強く鳴らしながら走り去ることで事なきを得た、という話をユーザーの方から聞いています」(斎藤さん)

先述の通り、どの周波数がクマ避けに効くかは、まだ十分な根拠があるわけではない。

だからこそ、音域の異なる鈴を2つ持つのが有効な備えではないだろうか。より大きな音で、さらに音域を重ねることで“先に気づかせる”状況を広げられる。

クマ鈴の効果に議論は残るものの、音を絶やさない運用は、遭遇リスクを下げる方向に働くはずだ。