真鍮製は高音域で澄んだ音色と大きめの音量が出やすく、遠達性に強い。一方、銅や鉄は真鍮に比べ音量は控えめだが、低音域のやわらかな音色が特徴で耳当たりがよい。

ダイキ精工が手がける「DaiFeel」は、硬質アルミニウム製だ。

「一般的なアルミとは異なり、航空機ボディにも使うグレードで強度は十分。材質の硬さゆえに高音域のクリアな音を生みやすいです」(斎藤さん)

DaiFeelは3700~3800Hzを中心に、70~80dBを確保。音は、高音になるほど波長が短く減衰しやすい。つまり遠くまで届きづらくなる。そのため内部形状と厚みで音量を底上げし、100~200m先でも気づかれる遠達性を狙っている。

「スズムシの音(約4000Hz)は、多くの人が心地よいと感じますよね。クマ鈴にも、その“心地よさ”を追求しました。長時間でも使い続けられる音を目指しています」(斎藤さん)

歩行中に常に音が鳴るように、クマ鈴はザックやベルトに取り付けつけておく
歩行中に常に音が鳴るように、クマ鈴はザックやベルトに取り付けつけておく

もっとも、実効性は音のスペックだけで決まらない。携行性も重要だ。付けっぱなしにできることは、そのまま鳴動時間の増加につながり、「先に知らせる」確率を押し上げる。

ここでアルミの利点が生きる。一般に真鍮や鉄よりもおおむね1/3程度と重量が軽く、尚且つ錆びづらい。例としてDaiFeelは約35gと超軽量だ。

DaiFeel。短冊を装着すれば風鈴としても利用できる
DaiFeel。短冊を装着すれば風鈴としても利用できる

クマ鈴を選ぶ際は、素材の特性を把握することが大切だ。重さや錆びにくさ、音色、音量の傾向を理解すれば、用途に合った一個を選びやすくなる。

クマ鈴を忘れた日に襲われた

「あの時はクマ鈴を忘れていたんです。普段、山に入るときは必ず真鍮製のクマ鈴をつけて行くのに…」(佐藤さん)