2025年、秋田県はクマの異常出没に揺れた。山林だけでなく市街地にもクマが現れ、住民は外出をためらうほどの不安を抱えた。そんな状況を変えるべく、五城目町のドローンスクールがAI技術を活用した新たな対策に挑んでいる。2026年の実用化を目指すその取り組みは、クマ被害の未来を大きく変える可能性を秘めている。
クマの異常出没に揺れた2025年
秋田県内では2025年、クマに襲われて4人が亡くなり、63人がけがをした。
山林だけでなく市街地での目撃情報も急増し、農作物の被害も爆発的に増加した。住民の間には「外出するのが怖い」という声が広がり、日常生活そのものが脅かされる状況となった。
こうした現実を前に、2026年は被害をゼロに近づけるための重要な一年と位置づけられている。
五城目町で進む“空からのクマ対策”
五城目町のドローンスクール「Dアカデミー東北」では、AIを活用したクマ対策システムの開発が進められている。

開発担当の高松あやのさんは、「クマが原因で外出することが怖くなっている住民に、今どこにクマがいるのかを伝え、危険回避につなげたい」と話す。

開発中のシステムは、ドローンが高度50メートルから最大100メートル先まで映像を届け、その映像をAIが解析する仕組みだ。
クマの可能性があるものを見つけるとアラートが鳴り、確実にクマと判断できればレーザー光を照射して自動追跡を開始する。クマとドローンの位置関係は行政や警察、猟友会とリアルタイムで共有され、迅速な対応につながる。
また、クマの動きを記録することで研究にも役立てられる。
AIの精度を高めるための実証実験

2024年には、クマの着ぐるみを着た人やクマの画像を使った実証実験が行われた。
全身が映っていれば「クマ」と認識できたものの、一部しか映らない場合には「ネコ」と誤認するなど、AIの学習データ不足が課題として浮かび上がった。

そこで開発チームは北秋田市の「くまくま園」に協力を依頼し、赤外線でクマを様々な角度や距離から撮影してAIに学習させた。
その結果、全身を捉えた場合は確実に認識できるようになり、さらに背中の一部や顔の8割、特徴的な腕や足だけでも「クマ」と判断できる精度に向上した。
秋田テレビが提供した映像を使った実験でも、茂みに隠れて顔だけが見えるクマや体の一部だけが映っている場合でもAIが「クマ」と認識するなど、実用化に向けた成果が確認されている。
高松さんは「将来的には顔の半分が映っただけでも判断できるようにしたい」と語る。
自動追跡の実力と残された課題
屋外にクマの剥製を置いてドローンを飛ばすと、静止状態の認識は成功し、さらに校庭を走るスタッフをドローンが自動で追跡するなど、追跡機能の有効性も確認された。

ドローンは雨天や夜間でも飛行可能で、最大約1時間飛行でき、バッテリーが少なくなると自動で離陸地点に戻る。
山林だけでなく、市街地などの人口密集地区でも国や自治体の依頼があれば事前許可なしで飛行できる点も、実用化に向けた強みだ。

しかし、市街地でクマが建物や物陰に隠れた場合には追跡が一時的に途切れる可能性があるほか、野生のクマを使った実証実験がまだ行われていないという課題も残る。
高松さんは「まだ実際にシステムはできていない段階。もっと実験を重ね、精度を上げていきたい」と話す。
2026年、実用化は現実となるか
早ければ2026年にも実用化される見込みのこのシステムは、クマ被害防止対策の新たな柱となる可能性がある。
住民の安全確保、行政の迅速な対応、そしてクマの生態研究への貢献など、多方面での効果が期待されている。
クマとの距離をどう保つかが問われる時代に、秋田発のAI×ドローン技術は、地域の安心を守るための大きな一歩となりそうだ。
(秋田テレビ)
