クマの出没や人身被害が急増する昨今。どうすれば危険を回避できるのだろうか。『日本クマ事件簿』『ドキュメント クマから逃げのびた人々』(ともに三才ブックス)の編集・執筆を手掛けた風来堂が、当事者や識者を取材して得た、クマの生態や命を守るためにできる知識を紹介する。
取材・文=風来堂
日本の山々では、クマとの遭遇が日常の一部として潜む。岩手県岩泉町と秋田県秋田市、それぞれで山中にクマと遭遇し、命を落としかねない状況に陥った事例がある。
杖でとっさに応戦…
2023年9月、岩泉町では、地元在住の佐藤誠志さんが山菜取りの最中、茂みから現れた子連れのツキノワグマに襲われた。
突然の接近に逃げ場を失い、腕と脚に傷を負いながらも必死に抵抗。山を歩くために持っていた杖代わりの棒切れでとっさに応戦した。その瞬間の判断が功を奏し、九死に一生を得ることができた。

佐藤さんは山菜採りを生業にしているため、常日頃からクマとの遭遇を覚悟し、頭の中で「もし出会ったらどうするか」をシミュレーションしていたという。

一方、1992年10月、秋田市の山で沢登りをしていた地元在住の越中谷永一さんは、さらに過酷な状況に直面している。