彼は、プレイヤーですが、チームのリーダーとしてKさんの上司でもあるはずです。組織における上司の役割は、“チームをまとめること”や“長期的なビジョンを示すこと”であり、そのうえで「結果を出すこと」です。
たとえKさんがどんなに優秀であっても、組織全体を考え、チームを動かし、今後の方向性を決めていくのは上司の役割です。林さんは、「リーダーとしての自分ができる仕事」に目を向け、Kさんとは違う形で会社に貢献できることを理解すればよいのです。
そうすることで、自尊心を取り戻すことができます。
Kさんからのプレゼンの申し出があった際、林さんは、「会社にとってはKさんの能力を最大限に活かすことが利益につながる」とも考えたはずです。
男性が上司として決断したこと
そのように自分が表に出て結果を出すことにこだわるのではなく、上司の立場で、会社にとって何がベストなのかという視点から決断できるかどうかは、林さんの管理職としてのキャリアにも大きく影響するのではないでしょうか。
プレゼンの件について林さんが部門長に、「次のプレゼンは、確実に契約したい取引先なので、Kさんに前面に出てもらって、自分はサポート役にまわりたい」と言うと、賛同してくれました。
部門長は「自分にもなにか協力できることがあればなんでも相談してほしい」と言ってくれたそうで、上司とはこういうものなのだと、あらためて考えさせられたということです。
ハイスペックな部下を持つことは、たしかに脅威になり得るかもしれません。しかし、それは同時に「最強の武器を持っている」ということでもあります。林さんは、勝ち負けではなく、「優秀な部下を活かすことが自分の役割」という考え方にシフトし、Kさんのスキルを活かしてチーム全体のレベルアップを図ることにしました。
このように考え方を変えられた林さんは、自信も取り戻すことができ、自分自身の成長にもつながったと話していました。
