優秀すぎる部下を持ったとき、あなたが上司ならどんな感情になるだろうか。

部下の優秀さを活かそうとするか、自分を脅かす存在として嫉妬などをしてしまうか…。心理学者の舟木彩乃さんへ相談した30代男性・林さん(仮名)もその一人。

ハイスペックすぎる部下を持った、30代男性の事例と彼の心理的背景にあるものを、著書『あなたの職場を憂鬱にする人たち』(集英社インターナショナル新書)から一部抜粋・再編集して紹介する。

30代男性がリーダーになるが…

【事例】
ハイスペックすぎる部下
<キーワード:自尊心の低下、葛藤、ジレンマ、認知的不協和>

コンサルティング企業で人事系のコンサルタントとして順調に業績を積み上げ、人柄も良い林さん(仮名、男性30代)は、新しく立ち上がったチームのリーダーに抜擢されました。

新規に作られたチームだったので、一から決めなければならないことが山ほどありましたが、チームワークも良く、みんなで協力し合いながら着々と準備が進んでいきました。

リーダーを支えようとチームで協力し合うが…(画像:イメージ)
リーダーを支えようとチームで協力し合うが…(画像:イメージ)
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配属されたメンバーは、林さんと年齢が近かったこともあり、みんなで彼を支えていこうという和気藹々(あいあい)とした雰囲気でした。

チームが発足して半年ほど経った頃、1年前に転職してきたKさん(男性20代)が、林さんのチームに配属されてきました。それまで林さんはKさんと接点がなかったので、話したことはありませんでしたが、かなり優秀な人物だということを社内の噂で知っていました。

Kさんは海外の有名大学院を優秀な成績で修了し、英語はもちろん、ドイツ語や中国語も堪能でした。IQの高い人だけが入会できるMENSA(メンサ)の会員でもあったそうです。

Kさんが優秀であることは、配属されてすぐにわかりました。全員で考えても解決策がわからなかった難しい課題でも、Kさんは的確な解決の糸口を見つけ出し、仕事のミスもほぼありませんでした。

それどころか、上司や同僚の業務を先回りして対応するなど、立ち回りの良さも併せ持っていました。

チーム内に広がる「任せておけば大丈夫」

Kさんは事業部長クラス(林さんの上司)が出席する戦略会議などでも、難解な案件を素早く理解し、鋭い分析をしていました。林さんの上司の事業部長をはじめ会議の参加者は、「Kさんは本当にすごいなぁ」と口々に言っていました。