職場などで「この人さえいなければ…」なんて思ったことは、少なからずあるだろう。「この人」に振り回されたり、「この人」の言動で気持ちが落ち込んでしまったり、そんな経験をしたことがあるかもしれない。

これまで官公庁や企業など1万人のカウンセリングをしてきた心理学者・舟木彩乃さんはどのような組織にも職場を「憂鬱にする人たち」は一定数存在するという。

一方で、「憂鬱にする側」からの相談も聞いてきたという舟木さん。そんな「憂鬱にする人」から身を守るための対処法などをまとめた著書『あなたの職場を憂鬱にする人たち』(集英社インターナショナル)から、「部下に嫉妬する上司」の事例を一部抜粋・再編集して紹介する。

部長の推薦で課長へ昇進するが

【事例】
部下に嫉妬する上司<キーワード:嫉妬、不安、下克上>

大手企業に就職し、同期で一番早く課長に抜擢(ばってき)された片岡さん(仮名、男性30代・企画営業部)は、人を笑わせるのが得意な明るい性格であることもあり、営業成績は常にトップでした。

直属の上司にあたる部長からは特に可愛がられ、若くして課長に昇進できたのも部長の推薦のおかげでした。

課長に昇進してからの片岡さんは、仕事が軌道に乗っていくのを実感していました。新規プロジェクトを企画したり、大きな契約を取ったりして、目覚ましい成果をあげていきました。

活躍する部下の昇進を部長は喜ぶと思っていたが…(画像:イメージ)
活躍する部下の昇進を部長は喜ぶと思っていたが…(画像:イメージ)
この記事の画像(5枚)

もちろん、昇進に導いてくれた部長は、誰よりも自分の仕事ぶりを喜んでくれていると思っていました。それまで部長を尊敬し、折に触れていろいろと相談もしてきたので、強い信頼関係で結ばれているとも思っていました。

しかし、課長になってある程度の裁量権を持たされるようになってからは、次第に自分の裁量で物事を決めることも多くなり、以前のように部長に相談することも少なくなっていきました。これは、片岡さんが意識的に部長に相談しなくなったわけではなく、管理職に就いたがゆえの自然な流れでした。

しかし、昇進から9か月ほど経った頃、片岡さんは、部長が中心になって動いていた大きなプロジェクトから突然外されてしまいました。