優秀な部下はどう考えていた…?

別視点:ハイスペック部下から見ると
<キーワード:しくじり効果、ギャップ>

ところで、ハイスペック部下Kさんは、林さんをはじめとしたチームについてどのような視点で見ていたのでしょうか。

Kさんと面談したとき、彼は良い意味で淡々としている印象でした。海外経験の影響かもしれませんが、仕事においては適任者が結果を出せばそれでいいという考え方のようでした。

大口取引先のプレゼンを自分がやると申し出たことも、チーム内では自身が一番成功する可能性が高いと考え、林さんやチームに貢献できると思ったからのようです。

ハイスペックな部下も悩んでいた(画像:イメージ)
ハイスペックな部下も悩んでいた(画像:イメージ)

一方で、彼は彼で、林さんに少し距離を置かれているように感じていたということです。林さんのKさんに対する警戒心のようなものが伝わっていたことも、その原因でしょうが、Kさん自身の人との距離の取り方も影響していたようです。

Kさんと話していると、隙がなく、無駄なことを話すのが好きではないという印象を受けます。Kさんは、海外の大学院に留学する前、大学の同級生たちから、「あなたみたいな優秀な人には、私たちの気持ちはわからないと思う」という類いのことを言われ傷ついたそうです。

その人たちは自分の仲間だと思っていたので、その経験をまだ引きずっていて、常々人との距離の取り方に難しさを感じているということでした。

ハイスペックな人も悩みがある

本ケースに限ったことではありませんが、ハイスペックな人ほど周りとの距離感に悩んでいることが多いようです。余談ですが、これは恋愛にも当てはまります。ハイスペックな人は、推されたり、憧れられたりすることが多いのですが、「自分は相手にされないだろうな」と思われてしまい、実際にはアプローチされにくいのです。

人は、完璧すぎる人よりも、少し抜けていたり、弱みを見せてくれたりするような人に共感を抱きやすいといわれています。これを心理学では、「しくじり効果」といいます。