職場であなたを憂鬱(ゆううつ)にさせる人は、上司、同僚、部下・後輩とさまざまな立場で存在するだろう。
心理学者の舟木彩乃さんは「職場の働きやすさの9割は人間関係で決まる」とする。
そうした人とは距離を置きたいところだが、どうしても関わらなければならないときもある。
著書『あなたの職場を憂鬱にする人たち』(集英社インターナショナル)から、教育担当をしている後輩に悩む20代女性の事例と、そんな後輩への対応について一部抜粋・再編集して紹介する。
悪気のない新人に心が疲弊する先輩
【事例】
人の話を最後まで聞かない後輩の教育担当になったら
<キーワード:女性のADHD、グレーゾーン、思考の多動性、混合型>
何度注意しても、会議に遅刻し、ごちゃごちゃしたデスクも片付けないような新人の教育担当になってしまったら、どうしますか?困って上司にかけ合ってみても、いまいち共感してもらえず、一人で抱え込んでいたりしたら、新人に悪気がなかったとしてもだんだんと教育担当の心は疲弊していきます。
こんな状況になったとき、どうしたらよいのでしょうか。
島田さん(仮名、女性20代)は、総合商社の総務部で3年目になります。今年入社した新人Iさん(女性20代)のOJT(On the Job Training:先輩社員などがマンツーマンで指導にあたり、実務を通して知識やスキルを身に付けさせる人材育成の方法)を担当することになりました。
Iさんに会う前、島田さんの上司(男性40代)から「今度、うちの部署に本配属されるIさんだけど、行動的で明るい女性だから、きっと島田さんも楽しくなると思うよ!OJT担当よろしくね」と、彼女の教育係を指示されました。
Iさんの経歴や背景を聞けば、大学時代に留学を経験していた他、複数のサークルやボランティア団体に所属し、その上アルバイトをかけもちしていた行動的な人物です。
実際に一緒に仕事をしてみると、上司の言っていた通り、彼女は明るく積極的な性格で好印象でした。Iさんが配属されて1か月くらいまでは、年次が一番下ながら、物怖じすることなく自分が思いついたアイディアを次々と提案し、仕事以外のことでも先輩社員に話しかけて、周囲を明るくしていました。
しかし、その一方で、整理整頓や時間管理が苦手らしく、毎日のようになにか捜しものをしていました。ランチから戻る時間や数人で集まる打ち合わせには、必ずと言っていいほど5分程度遅れます。
デスクは散らかり片付けしても…
Iさんのデスクは、資料やファイルが積み重なり、食べかけ飲みかけの物が何日も置いてあることがあります。
一番迷惑を被っているのは隣の席の島田さんで、Iさんのファイルが雪崩(なだれ)を起こして崩れ落ちてきたり、飲みかけのペットボトルをこぼされて島田さんの書類が汚れたりしたこともありました。
これらの件で、島田さんは何度もIさんに注意しました。注意を受けると彼女は、すぐに謝って、片付けに着手する素直さがあります。しかし、Iさんは、注意されている最中に話をさえぎって突然謝罪したり、「ところで先輩、知っています?」などと、ぜんぜん関係ない話しを始めたりすることもあります。島田さんは、そんな態度にイライラすることが何度もありました。
