世界遺産登録を目指す新潟県佐渡市の佐渡島の金山。世界遺産登録のカギを握るユネスコ世界遺産委員会の委員国に対し、花角知事が直接フランス・パリでアピールした。一方で、登録へ向けてはハードルも残されている。
登録のカギ握る“世界遺産委員会”
佐渡金山の世界遺産登録に向けた発信のため、ユネスコ本部があるフランス・パリを訪問した花角知事と佐渡市の渡辺竜五市長。
この記事の画像(20枚)日程2日目は、今回の訪問の最大の目的であるイベントに臨んだ。
パリのランドマーク・エッフェル塔を眺めるパリ日本文化会館。その一室では知事自ら座席の配置を指示するなど緊張感が漂う中、招待客を迎える準備が進んでいた。
そこにやってきたのは、世界遺産登録の可否を審議するユネスコ世界遺産委員会の委員国の大使などだ。
佐渡金山について審議する見込みの2024年7月の会合を前に、委員国に直接PRする場をユネスコ日本政府代表部がセッティングしたのだ。
世界遺産委員会の委員国は数年ごとに改選され、現在は日本を含む21か国が務めている。
世界遺産登録のカギを握る委員国だが、佐渡金山にとって気になる変化があった。
韓国が世界遺産登録の動きに反発
長年にわたる世界遺産登録に向けた活動を経て、ようやく2021年に文化庁の諮問機関・文化審議会で国内推薦候補として選定された佐渡金山。
歓喜に沸く地元とは裏腹に、その後、異例の展開が待っていた。
従来、文化審議会の決定通りにユネスコへの正式な推薦を行ってきた政府が「政府内で総合的な検討を行う」として推薦を保留。一時見送りも検討されたのだ。
その背景にあったとされるのが韓国の存在だ。
当時、FNNソウル支局の熱海吉和特派員は「韓国外務省報道官が『韓国人の強制労働の被害現場だ』としたうえで『直ちに撤回を促す』と強い反発を示している」とその背景を語る。
韓国政府は「佐渡金山は戦時中に朝鮮半島出身者が強制労働させられた場所だ」と主張。韓国の国会議員も佐渡を訪れ、世界遺産登録の動きに反発を示す事態に。
韓国は2015年に世界遺産に登録された明治日本の産業革命遺産をめぐっても強制労働があったと主張し反発。
その後、ユネスコの世界遺産委員会が「朝鮮半島出身者の説明が不十分」と決議していた。
これに花角知事は2022年の会見で、「江戸時代の日本の独自の手工業で金山をあれだけのものをつくり上げたことが価値なので戦時中の徴用工の問題とは関係ありません」と説明。
また、安倍元首相も「論戦を避ける形で登録を申請しないのは間違っているんだろうと思う」と話していた。
推薦を求める声が強まり、最終的に政府がユネスコへの推薦に踏み切ったことで世界遺産登録に向けたチャンスを迎えた佐渡金山。
その一方で、2023年11月、登録の可否を審議する世界遺産委員会の委員国に韓国が選任された。
その韓国政府は2024年1月にも「世界遺産の議論のためには佐渡金山の歴史全体を反映することが重要だと再度強調する」との声明を発表した。
世界遺産委員会へPRも韓国政府関係者の姿はなく…
世界遺産委員会の委員国の大使などを招いてパリで開かれた佐渡金山をPRするセミナー。
花角知事は「17世紀前半には世界全体の金の産出量の約10%を産出し、当時の金の純度99.54%と非常に高いものであった。これは評価基準の4番目の技術的な集合体に適用できるものであり、高い生産技術であることが言える」と世界遺産の評価基準に照らしながら佐渡金山の価値をプレゼンするなど、これまで以上に説明のわかりやすさを磨いて臨んでいた。
その言葉に出席者は真剣に耳を傾けるが、セミナーに韓国政府関係者の姿はなかった。
セミナー後、花角知事は「いきさつはわからないが、結果としてお越しにならなかった。歴史認識の問題は世界遺産の価値の議論とは別の話。そこは基本的に国の方において適切に対応されるべきものと思っている」と話した。
全会一致が通例とされる世界遺産委員会の決定。
ある国のユネスコ大使は世界遺産登録の賛否について「国同士の関係も考えなければいけない」と話した。
花角知事は「やれることを最大限やるというスタンスで臨んできたが、引き続き関係国の理解を広げる努力、まだもう少しやれる機会はつくりたい」と意気込むが、果たして世界遺産登録の行方は…最大のチャンスを前に関係者の努力が続く。
(NST新潟総合テレビ)