世界文化遺産への登録が決まった佐渡島の金山。登録決定後、新潟県の花角知事は「ここが最終ゴールではない」と語り、今後、世界遺産の波及効果をどう県全体に広げるか、佐渡金山の保存をどうしていくかなどの課題を挙げた。
一方、期待が高まっているのが地元の商店街や宿泊施設だ。多くの観光客を受け入れる体制の整備も求められている。
ようやく登録実現も「最終ゴールではない」
「本当に率直にうれしいという気持ちとホッとしたという気持ちが一緒になったような状況」
佐渡島の金山の世界遺産登録が決まった翌日にこう話した花角知事。
この記事の画像(12枚)佐渡市生まれの花角知事は2018年の知事就任後から、この世界遺産登録に向けた活動を精力的に行ってきた。
就任した直後には国内推薦を勝ち取るため、国へのロビー活動を実施したほか、2024年3月にはフランス・パリにあるユネスコを訪れ、PR活動にも汗を流した。
この6年間について、花角知事は「うまくいったこともあれば、思いがけないことにも遭遇した。そんなことがあっても関係者の熱意が通じたのか、それをリカバーして前に進んで行けた」と振り返る。
紆余曲折を経て、ようやく世界遺産登録を実現したが、花角知事は「これが最終ゴールではない」と強調する。
期待寄せる一方“不安”も「人手足りない」
一方、佐渡市では世界遺産登録が決まった翌日、さっそく世界遺産効果が表れていた。
登録を祝う横断幕が掲げられるなどお祝いムードに沸く中、大きな期待を寄せているのが地元の商店街だ。
スーパーの店長は「みんな喜んでいることは確か。そして波及効果が及ぶことも確か。最近は民泊を皆さんやっているから、民泊のお客さんがすでにちらほらいる」と笑顔を見せた。
飲食店の店主も「やっぱりお客さんが来てくれるということで、それが一番ありがたい。商売繁盛になるから。今まで低迷していたのが、ちょっとくらいはよくなると思うので」と話した。
しかし、この日は多くのお客さんが訪れたことで食材がなくなったため、予定よりも早く閉店。
今後に期待を寄せる一方で「来ていただくのはうれしいけど、手が回らないというのが心配。どこもそうだろうけど、人手が足りない。年も年だし、動ける範囲と力量が限られているから。やるだけやるけど」と不安の声もこぼした。
観光客受け入れへ「官民一体で良い結果を」
佐渡市は世界遺産の登録で2024年の年間宿泊者数は2023年よりも2割多い38万6000人と試算している。
佐渡観光旅館連盟の本間東三夫会長は「オーバーツーリズムとかよく言われるが、一年を通してゆっくりと佐渡を楽しんでいただければ、オーバーツーリズムにならないと思っているので、一年を通じて来ていただければ。冬をどう売っていくのか、どう楽しんでいただくのか、これは大きな課題なので、それを克服していきたい」と口にする。
また、レンタカーやタクシーなど島内の二次交通の不足なども課題に挙がる中、観光客のさらなる受け入れ体制の充実が求められる。
本間会長は「自分たちの持っているいいところをお客様に見ていただければ、満足していただけるんじゃないかと思う。佐渡市の指導のもと、官民一体となって進んでいるので、それが良い結果になれば」と話した。
波及効果を県全体へ「2度、3度足を運んでもらえるよう」
花角知事は今後の大きな課題として「保存」と「活用」を挙げている。
「次世代に引き継いでいくということは、世界遺産になった責務なのでしっかり保存をする。例えば景観を壊すようなものについて慎重に排除していかなければいけないと思う」
佐渡市では、すでにインバウンド対策などを進めているものの、今後、その波及効果を県全体に広げることができるかも大きなポイントだ。
「人が来るということは当然、地域が活性化する。2度、3度、佐渡や新潟に足を運んでもらうというような、そのことで結果として地域が活性化するそういう環境を目指していきたい」
世界遺産登録に向けて、タッグを組んできた県と佐渡市。その輪を県全体に広げて、効果を一過性のものとしないように取り組んでいくことが重要だ。
(NST新潟総合テレビ)