鹿児島県霧島市にあるJR嘉例川駅は明治時代から120年以上の歴史を持つレトロな木造駅舎として観光名所としても知られる。この懐かしさ溢れるスポットに、温泉施設や素朴な料理が楽しめる食堂などが次々と誕生している。大雨被害の影響で鉄道再開までもう少しかかるが未来を見据えた取り組みは着実に進んでいる。
大雨被害からの復活へ
2025年8月、JR肥薩線は大雨により甚大な被害を受けた。土台ごと流された線路の復旧工事は現在も進行中で、運行再開は2026年6月末が見込まれている。しかしそんな中、嘉例川駅周辺に、レトロな建物がぽつりぽつりと増えている現象が起きている。
癒しのスポット「嘉例川温泉」は珍しいモール泉
倉庫だった場所に誕生したのは「嘉例川温泉」。モール泉と呼ばれる珍しい泉質の温泉が掘り当てられた。太古の植物が堆積した泥炭層を通って湧き出る茶褐色のお湯が特徴だ。

内湯や露天風呂に加え、リラクゼーションサロン「ほぐしどころ ねじねじkaui」も開設され、嘉例川の癒やしスポットとして注目されている。
中馬明美代表は「自然が特に多いので、田舎だから懐かしさが一番の魅力かな。良かったな、暖まったな、癒やされたなと皆さんに帰ってもらったら一番うれしい」と語る。
古民家を活用した宿泊施設「すぎ蔵」
温泉の向かいには宿泊施設「すぎ蔵」がオープン。古民家から移設した昔ながらのかまどで炊く羽釜ご飯が評判だ。
「おにぎりだけで十分おいしいです。甘いですね」と女将の瀬戸良美さんが自慢する炊きたてのご飯は、「おいしい!愛を感じます」と訪れた客からも好評を博している。

レトロな雰囲気にこだわった内装の宿泊施設は、別館を含めて4つの客室を備え、窓からは嘉例川駅が見える。現在はプレオープン中で、おにぎりやぜんざいの販売は不定期だが、宿泊は受け付けている。
懐かしい味の「かあちゃん食堂」
2025年春にオープンした「かあちゃん食堂」の看板メニューは「かあちゃん定食」。地元特産の原木しいたけなどを使った野菜の煮しめが主役で、「こういうのが食べたかった」と評判になっている。家庭的な味付けのそばやうどんも人気だ。

食事に訪れた地元の人は「あっさりしてちょっと薄味、おいしいです。ちょっと前までこんな所でご飯が食べられるなんて思ってなかった」と喜びを語る。
かつてはこの周辺に商店街やパチンコ店もあり、にぎやかだったという。地元の人々は、往時の活気を懐かしみながらも、新しい施設が次々と生まれる現状に期待を寄せている。
地域の魅力にひかれた仕掛け人が再生をけん引
これらの施設開発を主導しているのは、永田浩次さんだ。霧島市出身の永田さんは、6年前にこの地を訪れ、「なかなか良い場所だな」と印象を受けたという。
「駅舎が築120年の古い木造なので、それにマッチした外観、街づくりをしようと一生懸命考えた」という永田さん。地元の人々が嘉例川駅を大切にする姿に感銘を受け、NPO法人を設立。倉庫や空き家をリノベーションして新たな観光スポットを次々と創出している。

永田さんの取り組みは観光開発にとどまらない。地元での雇用創出や、地域で生産された野菜や手作り作品の販売など、地域経済の活性化も目指している。「だいたい8人から10人ぐらいパートの人々に手伝ってもらってます」と永田さんは地域の協力体制について語る。
鍋を囲んで未来へ向けた取り組み議論
宿泊施設の宴会場では永田さんと20人あまりの地域の仲間たちが集まり、嘉例川の未来について語り合う定例会が開かれている。定例会といっても鍋を囲んで和やかな雰囲気だ。
「マルシェを2月22日、3月も4月も5月も毎月計画しています。舞台もしっかり造って芸人さんも呼んでますので、盛り上げましょう」と永田さんは意気込む。
嘉例川駅前の温泉と宿泊施設は、桜が咲く2026年春のグランドオープンを目指している。JR肥薩線の運行再開と相まって、この地域が再び活気を取り戻す日も近い。
(動画で見る▶「レトロな魅力倍増中」嘉例川駅周辺に温泉と手作り食堂が続々オープン、町はどう変わる?)
