時間が経つと共に大幅に減り続け、今後は増税の対象になるかもしれない「20年後の退職金」を守ろうとして会社に残った結果、50歳でリストラされて仕事を失ってしまったら、もはや元も子もありません。
前述の厚生労働省調査によれば、早期退職プログラムなど「早期優遇」扱いの退職金において割り増しされる金額は、たったの月収3.9カ月分です(大卒以上の管理・事務・技術職の場合)。
割り増し分を含めた「退職金総額」でも40カ月分程度なので、いわば3年ちょっとくらいの給料と同等の金額に過ぎません。
本来、65歳の定年まで毎月もらえるはずだと思っていた15年分の給料の代わりに、3年4ヵ月分の給料に相当する「退職金」をもらって会社を追い出されたとき、あなたは、50歳です。
そのとき、あなたは再就職できるのでしょうか?もし今後、会社の経営や業界の将来性、自分自身の雇用状況などに懸念があるのであれば、できるだけ早く動かないと一生後悔する結果になりかねません。
「年齢的に転職できるかどうか不安」だからこそ、手遅れになる前に、一刻も早く手を打っておかないといけないのです。
「退職金が満額出ないのは嫌だ」ではなく、「退職金が果たしてどの程度もらえるかは未知数なのだから、それをキャリア選択の決定打にしてはいけない」という意識をしっかり持った方が良いです。
もちろん、「退職金はどうせもらえない」「ないものだと思え」とは言いません。ただし、「当然たくさんもらえるものだ」と思っていると、年齢を重ねたときに痛い目に遭うかもしれないということです。
安斎響市
日系大手メーカー海外営業部、外資系大手IT企業の事業企画部長などを経て、2023年に独立。「転職とキャリア」をテーマに、書籍、note、Xなどで発信している
