厚生労働省が約5年に一度発行している就労条件総合調査の「退職給付(一時金・年金)の支給実態」によれば、退職金の平均支給額は、過去20年の間に600万円以上も減少しています。

「大卒以上の管理・事務・技術職」かつ「定年退職」前提での退職金の平均支給額は、2003年調査時点での約2499万円から、2023年の調査では1896万円(差し引きで603万円の減少)となったことが報告されているのです。このペースで減り続ければ、さらに20年後にはもっと大幅に減額されていることでしょう。

また、退職金の支給はあくまで「現金」なので、日本円の為替レートが悪化し続けた場合、退職金の換算価値も目減りしていきます。

周知の通り、日本政府は現在、「退職金に対する課税制度の見直し」も継続して検討している状況です。これまで長い間メスが入れられなかった「聖域」たる退職金にも、増税の手が伸びようとしています。

これらの状況を総合的に考えると、退職金が果たして、私たちが定年退職する頃にどの程度の手元資金として残るのか、大部分が未知数だと言えます。

「退職金が満額出なくなるのが心配だから転職しない」と言うとき、ほとんどの人は、その「退職金の中身」にまで深く考えを巡らせていません。

20年後のお金を守っても…

さも大事そうに「退職金」について語るとき、その中身が年々どんどん薄くなっていることを正しく認識できていないのです。