食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。 

今回は特別編。新宿から電車で約45分、江戸の風情が今も息づく町、小江戸・川越まで足を伸ばして食べ尽くし旅へ。

蔵造りの町並みを歩けば、菓子屋横丁の甘い香り、歴史ある神社仏閣、そして江戸時代から時を告げる「時の鐘」と、散策するだけで、まるでタイムスリップしたような気分に浸ることができる。さらに、植野さんの飲み友達・俳優の市村正親さんの思い出の味も紹介していく。

小江戸・川越の象徴 蔵造りの川越一番街

旅の第一歩は川越らしさが一番あふれる場所から。それは、蔵造りの建物が軒を連ねる「川越一番街」。

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蔵造りとは江戸時代に発展した、火事の延焼を防ぐための耐火建築。特徴は厚い土壁に外壁を漆喰で仕上げたもの。さらに分厚い窓により外からの火も防ぐ。明治の大火で蔵造りの建物が焼け残ったことから、この一番街には蔵造りの建物が広がっていった。

小江戸・川越の象徴ともいえるこの場所は、江戸の景観を受け継ぐ重要な歴史的遺産として多くの観光客が訪れる。

「時の鐘」は江戸時代初頭、城下町に時を知らせるために建てられた。現在の鐘楼は明治に再建されたもの。一日に四度、川越の町に鐘の音を響かせている。

ウナギの蒲焼きが食べられる「うなぎ傳米」

実は、ウナギが名物でもある川越。海がない川越で貴重なたんぱく源として重宝されたウナギは地元を流れる川の恵み。タレに欠かせないしょうゆづくりも盛んだったことから、やがて川越は“ウナギの町”として知られるように。