食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。
植野さんが紹介するのは「ポテトサラダ」。東京・代々木の酒場「よよぎあん」を訪れ、ほくほくのじゃがいもに滑らかな里芋ソースを乗せ、焦がしバターとマヨネーズの香ばしさで焼き上げる温かい一皿を紹介。
丁寧で温かい店主の人柄が感じられる味わいと、旬の食材を生かした季節感溢れる料理づくりにも迫る。
とんかつ店地下でお酒を楽しむ場所
植野さんがやってきたのは代々木駅。繁華街・新宿から一駅しか離れていないが、古くからの住人も多い落ち着いた街だ。

そんな街にあるのが、「よよぎあん」。代々木駅西口から徒歩約1分、大きく「とんかつ」と書かれたビルの地下一階にある。1978年に開店し、代々木エリア屈指の人気店として、多くの“飲んべえ”を虜にしている。
厨房を囲むカウンターのほか、テーブル席とお座敷席で全37席。開店と同時に近隣のサラリーマンや、長年通う常連であっという間に満席になるなど、店内は賑やか。
カウンター越しの厨房にいるのは、店主・関将伸さん。和食店などで修業を詰んだのち、20年ほど前から「よよぎあん」を取り仕切っている。この店を開店したのは関さんの父・信行さん。もともと、2階のとんかつ店「代々木庵」を営んでいたが、「お酒を楽しむ場所を作りたい!」と思いたち、同じビルの地下で始めたのが「よよぎあん」だという。
料理を通じて季節を感じてほしい
店主が心掛けているのは「料理を通じて季節を感じてもらう」こと。そのため、酒場の定番「もつ煮込み」も月ごとに衣替えしている。

秋を迎える10月、11月は「きのこのもつ煮」や「白菜のもつ煮」。夏場はトマトのもつ煮やニラのもつ煮などに変化。

また仕入れる食材によって、メニューも日々一新。ブランド豚ゴールデンポークのひき肉を赤味噌で味付け、カッテージチーズといただく「豚みそ」や、辛すぎず、生でも美味しい谷中生姜を豚肉で巻いた「肉巻き」など、つまみにも食事にもぴったりのメニューがそろっている。
満足度の高さに、居心地の良さ、四季折々の料理に出会える店だ。
毎朝仕入れた野菜からメニューを考える
植野さんから料理人になった経緯を聞かれた関さんは「最初は普通のサラリーマンの内定をいただいていたのですが、8~9月くらいに何か違うんじゃないか、何か自分で勝負できる仕事の方が自分には合っているんじゃないかと思いました」と語る。
それまで家を継ぐことはあまり考えていなかったという関さんは「一切なかったです、継ぎたくなくて、逃げて大学行っていました」と話した。

自分の力で勝負ができる「料理人」の道を選んだ関さんは、その後鮮魚店や酒場で10年間修業。父が怪我をしたのをきっかけに、32歳で「よよぎあん」を継ぐことになる。
そそして、父の代からメニューを一新。そこで関さんが大事にしたのは「野菜」だった。珍しい品種や市場には出回らない野菜を求めて、JAの直売所や生産者のもとまで足を運ぶ。
仕入れた野菜からメニューを考えるため、毎日内容が変化。それは、大変そうだと言う植野さんに「その時にあるもの、その季節のものをお客さんに感じてもらえるのが一番かな、と思う」「やったことが全部自分に返ってくる、それに付き合ってくれるスタッフに感謝」と話した。
食材と料理への飽くなき探求心。まさに、それがこの店が愛され続ける理由だ。

本日のお目当て、よよぎあんの「ポテトサラダ」。
一口食べた植野さんは「いろんな美味しいものの旨味がギュッと詰まっている、里芋ソースが不思議に美味しさを高めている」と感動していた。
よよぎあん「ポテトサラダ」レシピを紹介する。
