「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟が出来ているのか。」

高市早苗首相の“台湾有事”をめぐる国会答弁を受けて、大阪にある中国総領事館の薛剣駐大阪総領事がSNSに投稿した内容について、11月11日、与野党から猛反発の声が挙がりました。

自民党 小林鷹之政調会長:
大国の外交官として、著しく品位を欠くものであって。自民党として到底看過できるものではないですし、中国政府に対しまして強く抗議をいたします。
立憲民主党 安住淳幹事長:
とても外交官にふさわしい発言では全くないので、日中関係に何らプラスにならない残念な発言ですね。
公明党 斉藤鉄夫代表:
公明党としても、中国大使館に懸念を伝えた。どう喝ともとれる発言は、外交官としてあるまじき発言だと。

薛剣総領事は2021年に駐大阪総領事に就任。自ら“パンダ総領事”として、日中を結ぶイベントに参加する一方で、2024年の衆院選では特定の政党への投票をSNSで呼びかけ、物議を醸したこともあります。

問題の投稿は、その後、削除されたものの、政府は「極めて不適切」として中国側に強く抗議したことを明らかにしました。

自民党 高木啓衆院議員:
ペルソナ・ノン・グラータ(国外退去など)を含めて、中国側として、この問題をしっかり処理をしていただきたい。

しかしその一方で、中国外務省は「外交官の個人的な投稿は、台湾を中国から分離させようとたくらみ、台湾海峡の武力介入をあおる、誤った危険な言説を対象としたものだ」として、薛剣総領事の発言を事実上、擁護。
さらに、高市首相の“台湾有事”をめぐる発言について、「台湾問題は完全に中国の内政問題」だとして、日本に抗議したと明らかにしました。
中国政府の“戦狼”外交も影響か?「外交部が標的に」
台湾有事をめぐる国会答弁について、「最悪のケースを想定した答弁」として、撤回・取り消しはしないとした高市首相。

11日も、撤回の必要はないと改めた強調した上で、“政府の立場を超えた発言”と受け止められたことに対し、反省の弁を述べました。

高市首相:
これが、従来の政府の立場を超えて答弁したかのように受け止められてしまったことを反省点として捉え、今後の国会での議論に臨んでまいりたいという気持ちでございます。
台湾をめぐる問題が、対話により平和的に解決されることを期待するというのが、我が国の従来から一貫した立場でございます。

キヤノングローバル戦略研究所上席研究員で、「台湾有事と日本の危機」の著者でもある峯村健司氏は、今回の問題をどのように見たのでしょうか。
峯村健司氏:
高市さんの(台湾有事をめぐる)発言は、従来の総理大臣よりは踏み込んだ発言であることは確かですが、取り消すような発言かというと、その必要は全くなくて、これまでの日本の答弁の延長線上の話であると。

――過激な投稿をした薛剣氏とはどのような人物なのでしょうか?
昔私が会ったときは、とてもじゃないですが「首を切る」なんてことをいうような人ではなくて、おとなしい方で。
実は、薛剣さんの前任者の大阪総領事の方が問題を起こしていまして、誰にも告知しないまま帰国してしまったんです。どうもそれが何か汚職とかに関わっていたのではないかということもあり、(後任として)頑張らなくてはいけないというか、ある意味キャラクターが変わってしまうほど(態度が)強くなっている。
あとは、中国外交部自体が、“戦狼”(せんろう)外交というような状況になってきているので、その影響もあって強い態度になっているのだと。

――強い言葉を言う方が、外交部で評価されると?
そうなっているんです。元々外交部はその国の担当と仲良くすることが目的であって、今の強気の習近平政権からすると「お前らなまぬるい」と、「甘い」と見られていると。
さらに、外交部の幹部たちがみんな今、汚職で逮捕されて取り調べられている、ある意味外交部が“標的”となっているんです。
中でも、“日本語使い”の人たちは「日本に甘い」と言われているので、その逆張りで強く見せなくてはいけないと。

――これまでの総領事は、日本に対して過激な発言をすることはなかった?
10年前とかはあり得なかったのですが、ここ最近は続出していまして、今の東京(にある中国大使館)トップの呉江浩大使は、台湾有事に日本が手を出したら「国民が火の海に連れ込まれます」と。そこはやはり最近の傾向ではあるのですが、今回の件で言うと、一国の首相の首を切ると言った、これは相当強い言葉ですし、米国の駐日大使のジョージ・グラスさんとかも批判するなど、各国に広がってしまっているので。
一番中国が気にするのは米国の動きなので、米国の批判に飛び火してはまずいと、すぐに投稿を削除したと。

――今後について
薛剣さんの言葉というより、その後ろにある中国の意向として、とにかく「日本は台湾に対して口出しするな」と。一番中国が日本に対して求めていることなんです。
なので、ここは日中関係において、台湾はずっと火種であり続けますし、関係改善の方に行く可能性というのは、私は高くないと思います。
今回の発言気になるのが、高市さんは「戦艦を使って」と言っていますが、戦艦を持っている国というのはないんです。今作っていないので、これを見ると、安全保障分かっているの?という突っ込みが入りかねない、若干、答弁が荒いなと。
ただ、一方でこういう形で言葉を発信することで、日本の態度を示すことは抑止になるので、しっかり言葉を選びながら“適切なシグナル”を送ることが重要ですね。
(「サン!シャイン」 11月12日放送)
