私たちがほとんど毎日食べているお米。けれど、生活の中に当たり前にあるものだからこそ、実は知らないことも多いもの。おいしい炊き方や上手な保存方法など、知っているようで知らない話を、お米に魅了されて新聞記者から米農家に転身し、現在は「お米ライター」として活躍する柏木智帆さんが綴る。
新米の季節です。とれたてのお米を存分に楽しみたいところですが、お米の価格の行方にやきもきしている人が多いのではないでしょうか。
2024年夏、お米がスーパーなどの店頭から消え、秋に新米が出回ってからも価格は上昇。今年の春先には店頭小売平均価格が5キロ4000円を超えました。5キロ2000円程度の備蓄米が放出されると店頭小売平均価格は3000円台にまで下がりましたが、いま再び4000円台に値上がりしています。
今後、お米の価格はどうなっていくのでしょう。
高値にもかかわらず購入量は増加
お米が品薄になったり、価格が上がったりしたことで、お米はあって当たり前ではないことを思い知らされたという人もいるのではないでしょうか。

たとえば、小麦が品薄になったり高くなったりしたとしても、お米ほどの騒動にならなかったように思います。私たちが小麦を主食として食べるときはパンや麺などすでに加工されている状態を購入するのがほとんどで、パンや麺の製造業者や飲食店は困ってしまうとは思いますが、スーパーに安価なパンや麺を求める人たちの行列ができるという光景は想像しにくいように思います。長年にわたってお米の消費量は右下がり傾向でしたが、やはりお米はなくてはならない主食として私たちの日常に根付いていると言えるでしょう。
そんな中、お米が値上がりしていたにもかかわらず2024年のお米の購入量は増加しました。総務省の家計調査によると、2人以上の世帯のお米の購入量は前年比3.55キロ増加の60.20キロ。ある米屋ではお米の入荷が減ったときに「1家族1回10キロまで」と購入制限をもうけたところ、以前は5キロずつ購入していた客が10キロずつ買うようになり、購入制限を解くとその客は5キロずつの購入に戻しました。お米が購入できなくなるかもしれないという不安から普段よりも購入する量や頻度を増やしたという人は多そうです。