長野県佐久市で2015年に起きた中学3年生の男子生徒が車にはねられて死亡した事故で、最高裁が2月7日に判決を言い渡す。一審では有罪とされた被告男性が二審で逆転無罪となり、その判断の是非が焦点となっている。事故後、被告がコンビニで口臭防止剤を購入した約1分間の行動をどう解釈するかが争点だ。専門家は「高裁差し戻し」の可能性を指摘し、判決の重要性を強調している。
「加害者に懲役刑を」
事故から間もなく10年を迎える1月中旬、亡くなった中学3年生の樹生さんの両親が墓参りに訪れた。
父の和田善光さん(54)は「二十歳すぎたら、一緒に(酒を)飲むのをすごく楽しみに私も息子もしていたので、お供えにビール1本ずつあげたり」と語った。

母の真理さん(53)は「救護措置義務違反、報告義務違反が認められること、加害者に懲役刑が宣告されること、それを見守っていてほしいとお願いした」と、樹生さんに裁判への思いを伝えた。
飲酒運転を隠すため口臭防止剤
事故を起こした男性(52)は、過失運転致死の罪で執行猶予付きの有罪判決を受けた。
しかし、両親は納得せずひき逃げでの起訴を求めた。

男性は事故直後、コンビニ店で飲酒運転を隠すために口臭防止剤を買い、服用していたのだ。
一審と二審で判断分かれる
一審は事故後の行動から「ひき逃げ」にあたると認定したが、二審は「逆転無罪」とした。口臭防止剤の購入・服用に要した時間は1分余りで、人工呼吸もしており「直ちに救護しなかったとは言えない」と判断したのだ。

真理さんは2023年9月、「被害者の生命や身体の保護を全く無視した判決、最低の判決。『こんな国に産んでごめんね』としか言えない」と怒りを露わにした。
最高裁「弁論」開く
最高裁は2024年12月、判決を見直すのに必要な「弁論」を開いた。
検察側は「道交法の解釈を誤っており、被告の行動を過小評価している」と主張。

一方、弁護側は二審判決を支持しつつ、既に過失運転致死罪で処罰が確定しており、「別々に処罰する理由はない」と一事不再理の原則を主張した。
「絶対に救護義務違反」
事故から3月で10年を迎える。
2月7日、両親は最高裁を傍聴する予定だ。
善光さんは「われわれは絶対に救護義務違反だと思っているので、救護義務違反だという判決が下されることを願っている」と述べた。

真理さんも「(違反が認められれば)本当に悔しい思いをして亡くなった、命を奪われた樹生も少しは救われるのではないかと思っている」と話した。
専門家「高裁差し戻し」の可能性
東京都立大学の星周一郎教授(刑事訴訟法・交通犯罪に詳しい)は、「救護義務を果たしたと言えるかどうかを判断する基準としての『直ちに』というのが、どういうような場合を指しているのかの判断。今回、最高裁の判断が示されるということでは大きな意義を持ってると思う」と指摘する。

さらに教授は「最高裁では事実関係の評価をしないという原則があるので、東京高裁の判断が間違っていたということであれば、もう1回事件を東京高裁で審理しなさいという、『破棄差し戻し』になる可能性が一番高いかなと思います。法解釈のところで判断を変えるだけでいいということであれば、最高裁が『破棄自判』するというパターンもある」と説明した。
最高裁の判決の言い渡しは2月7日午後3時の予定だ。
(長野放送)