12月1日、24歳の誕生日を迎えられた天皇皇后両陛下の長女・敬宮愛子さま。
初めての国際親善の旅となったラオス公式訪問に同行取材すると、愛子さまの「心を通わせるためのこまやかな工夫」と「機転」、そして「愛子さまの思いを大切にする」側近の思いが垣間見えた。
想定外の状況も…友好親善の務め
24歳を目前に臨まれた初めての外国公式訪問。
政府からの招待を受け、日本を代表して外国を訪れ、国家元首に両陛下からのメッセージを伝え、友好親善を深めるという務めは重い。しかも、国内と違い、外国での行事は想定外の状況になることが多々ある。
20年余皇室の取材を続けている筆者にとって、幼かった愛子さまが初めての旅でどのように現地の人たちと向き合い、親善の役割を果たされるのか、しっかり見届けたいという思いを胸に、いくつかの点に注目しながら同行取材した。
民族衣装で心通わせ 現地報道でも注目
注目点のひとつは「装い」。訪問先や行事の内容に応じて、日本の文化を伝える和装や現地の民族衣装などをどの場面でお召しになるのか。そこに愛子さまの思いが込められていると考え、同行する側近に質問したところ、「お楽しみです」との回答だった。
現地日程の初日、ラオスで最も格式が高いとされる仏塔「タートルアン」の前でご到着を待っていると、小豆色の肩掛け「パービアン」や巻きスカート「シン」を身にまとう愛子さまのお姿が見えた。
ラオスの人たちが大切にしている場所への敬意を、装いを通じて表されていた。
今回愛子さまは国家主席夫人と副主席から2着の民族衣装を贈られている。
事前に愛子さまから色の好みを聞き取り、用意されたものだという。衣装の準備に携わったラオス・ハンディクラフト協会のスーピタ会長に取材すると、この日まずお召しになった衣装は、優しさや幸運などを願う花の文様で「高貴な方のための1着」「お召し頂けたらうれしい」と話していた。
現地報道でも、愛子さまの民族衣装姿は大きな注目を集めた。
ナイトマーケットの売店の女性も記者にYouTubeの映像を見せ、「プリンセスが民族衣装を着てくれて光栄」と喜んでいた。
民族衣装の着付けに苦戦
実はこの時、仏塔への到着は予定よりも遅れた。ある側近によると、ラオス入り後に衣装を受け取られたので、初めて着用してみると着付けが難しく苦戦し、想定よりも時間がかかったそうだ。
敬意や思いが伝わるそれぞれの場面にふさわしい装いを…。
お召し物の準備には外国訪問の経験豊富な皇后さまがこまやかに心を配られていたという。当日苦戦はしたものの、ラオス側のサポート体制もあり、無事に着付けることができた。
両陛下はそのことに深く感謝されているといい、娘の訪問の成功を願う親の思いが感じられた。
また、どの場面で民族衣装を着るかは、愛子さまが周囲との相談の上、ラオスの文化への敬意や贈って下さった方への感謝を表したい、とご自分で決められたという。
国家副主席はラオス語で「美しい」と4、5回連呼し、心からの親しみを込めて愛子さまに接していた。
愛子さま自身も初めて袖を通し「歓迎して下さるラオスの方々に近づいた感じがした」と話されていた。
訪日経験豊富な国のトップ、国家主席も「ラオスの若者が自国の文化を誇りに思うことにつながり、日本の方にもラオスの伝統文化を知って頂く機会になる」と喜んでいたという。
装いに込めた配慮が心と心の距離を近づけた。
機転を利かせたひと言で女の子を笑顔に
陛下もかつて訪問された日・ラオス武道センター。柔道、合気道など4つの演武が披露された後、代表選手と交流された際にも、愛子さまの機転で笑顔が広がる場面があった。
通訳などによると、空手を披露した9歳の女の子が、首からかけたメダルを手で隠していることに気付いた愛子さまは、事前に読んだ資料に国際大会で金メダルを獲得したと記載されていたことを思い出された。
そこで「金メダルすごいね」と声をかけられると女の子は隠していたメダルを見せ、緊張がほどけ笑顔で喜び、その場に温かい空気が広がった。
国内の行事でも、愛子さまはカメラがうまく撮影できるよう立ち位置を自ら微調整されることがある。初めての外国訪問でも、周囲や相手の様子をよく見て、機転を利かせられていると感じる瞬間だった。
想定外にも臨機応変に
外国訪問では想定外の状況になることが多く、陛下はかつて側近に「外国訪問はそういうものですよ」と話し、臨機応変に対応されていた。
今回ラオスでも、仏塔で急に記念撮影を提案される場面があった。到着後間もない行事で想定外の状況に直面したが、愛子さまは側近に確認の上すぐに応じ、ラオス側の随員にも自ら声をかけて一緒に撮影された。随員は記念に残る写真が撮れたことに感激していた。
また、伝統織物の博物館に到着した際、大きな花束を贈られた。一旦側近に預けたものの、すぐに自ら声をかけ、花束を手に持ち記念撮影をされていた。
贈られた思いを大切にされるとっさの行動だと感じられた。
自ら提案も 「愛子さまの思いを大切に」
今回の訪問では、両手を合わせ、右膝を少し下げる現地流の挨拶をはじめ、心を通わせるために愛子さま自ら提案されることが多々あったという。
仏像をお参りする際横座りをされていたのも、現地の女性の所作に倣ったものだった。
移動の機内や車中、早朝の高速鉄道でも、マーカーを引きながら資料を読み込み、訪問先の情報や現地の習慣などを確認されていたという愛子さま。

ある側近は、これまで国内での活動で発揮されていた対応力が生かされるよう、今回の訪問では「とにかく愛子さまの思いを大切にするよう心がけた」と話していた。その背景には、愛子さまの丁寧な準備と対応力への深い信頼があると感じた。
「私も、父を始め、皇室の方々の歩みを受け継ぎ、日本とラオスの懸け橋の一端を担うことができれば幸いに思います」(11月20日ルアンパバーンでの昼食会でのおことば)
皇室の長い伝統と歴史の1ページに、友好の絆を受け継ぐ担い手でありたい。
「国際親善デビュー」となったラオスへの旅は、皇室の一員としての重い責任を負いながらも、愛子さまの思いやアイデアが取り入れられ、愛子さまらしいほのぼのとした温かさに包まれたものとなった。
旅の安全と幸せを願う「バーシー」というラオスの儀式の白い糸は、帰国後も愛子さまの左手首に大切に巻かれていた。
特別な思い出として刻まれたこの訪問を礎に、愛子さまの「親善の旅」はこれからも続いていく。
【執筆:フジテレビ宮内庁担当 宮﨑千歳】
