米価の上昇は農家の支えにも

しばらくはお米の価格が下がりそうにありませんが、この状態が続くと米離れの懸念もあります。

2022年はウクライナ情勢の影響で輸入小麦の価格が上昇してお米に注目が集まり始め、23年度のお米の消費量は微増しました。そして現在は、国内のお米の価格が上昇している一方で、米中貿易摩擦などの影響で輸入小麦が安値になっています。「安いから食べる」「高いから食べない」では、将来的には国産米が希少な食べものになってしまうでしょう。お米の価格が上昇することで農家は未来への投資ができ、規模拡大や後継者の確保にもつながります。

わが家の里芋ごはん(筆者撮影)
わが家の里芋ごはん(筆者撮影)

これからもずっと国産米を食べ続けていけるかどうかは日々の私たちの1食1食にかかっています。そうは言っても「食べなければいけないから食べる」ではなく「食べたいから食べる」という消費のかたちが理想ですよね。秋が深まるにつれて、里芋ごはんや栗ごはんなどの炊き込みごはんもおいしい季節。お米はあって当たり前の存在ではないということを胸に刻みつつ新米を食べると、その味わいもひとしおです。

柏木智帆(かしわぎ・ちほ)
米・食味鑑定士、ごはんソムリエ、お米ライター。

柏木智帆
柏木智帆

米・食味鑑定士/ごはんソムリエ/お米ライター。大学卒業後、2005年神奈川新聞社に入社、編集局報道部に配属。新聞記者として様々な取材活動を行うなかで、稲作を取り巻く現状や日本文化の根っこである「お米」について興味を持ち始める。農業の経験がない立場で記事を書くことに疑問を抱くようになり、農業の現場に立つ人間になりたいと就農を決意、8年間勤めた新聞社を退職。無農薬・無肥料での稲作に取り組むと同時に、キッチンカーでおむすびの販売やケータリング事業も運営。2014年秋より都内に拠点を移し、お米ライターとして活動を開始。2017年に取材で知り合った米農家の男性と結婚し、福島県へ移住。夫と娘と共に田んぼに触れる生活を送りながら、お米の消費アップをライフワークに、様々なメディアでお米の魅力を伝えている。また、米食を通した食育にも目を向けている。2021年から「おむすび権米衛」のアドバイザーに就任。
著書に『知れば知るほどおもしろいお米のはなし』(三笠書房)、『お米がもっと好きになる。炊き方、食べ方、選び方』(技術評論社)がある。