私たちがほとんど毎日食べているお米。けれど、生活の中に当たり前にあるものだからこそ、実は知らないことも多いもの。おいしい炊き方や上手な保存方法など、知っているようで知らない話を、お米に魅了されて新聞記者から米農家に転身し、現在は「お米ライター」として活躍する柏木智帆さんが綴る。
文・写真=柏木智帆
お米に関わる仕事をしていると、「一番おいしい品種」を質問されることがありますが、答えに困ってしまいます。同じ品種でも栽培環境によって味わいは異なりますし、好みは人それぞれだからです。
そこで、今回は「注目されている品種」と、私が「注目している品種」をご紹介します。
みずみずしく輝く「ゆうだい21」
近年、お米のコンクールで多数の賞を獲得して注目されているのは、栃木県の宇都宮大学で生まれた「ゆうだい21」という品種です。前田忠信・宇都宮大学名誉教授が20年かけて品種として育てあげ、2010年に品種登録されました。
コンクールではコシヒカリよりもノミネート数が多いものの、あまり店頭で見かけることがないためか、宇都宮市民でも「知らない」「食べたことがない」という人もいるのが現状です。
それでも、2025年2月に宇都宮大学で開かれた「ゆうだい21」だけを集めたコンクールでは、1都1府30県から計215点の「ゆうだい21」が出品されるなど、おいしいお米を目指す各地の農家によって栽培されています。
「ゆうだい21」はコシヒカリよりも粘りが強いですが、もち米に近い粘りとやわらかさを持った「低アミロース品種」のような食感とは違います。低アミロース品種は水を減らした炊飯が推奨されていますが、「ゆうだい21」は水を減らして炊いてしまうと持ち味を出すことができない傾向があると感じます。
最大の特徴は「おねば」の厚さ。
