そんななか、親族が知らない間に火葬されたという“うまいように死ねなかった”事案が発生しています。番組では、ある女性の例を紹介しました。
その女性は海外に住んでいますが、母親と頻繁に連絡を取り合っていたそうです。しかし、突然、連絡がとれなくなり、心配になって帰国すると、母親は救急搬送され、隣接する自治体の病院で亡くなっていたことがわかりました。
そればかりか、すでに火葬されていたのです。病院のある自治体が、母親の住む自治体に照会し、遺体の引き取れる親族を探したのですが、海外に住む女性までたどり着けなかったのです。
ひとりでうまいように死ぬ技術
ひとり暮らしの高齢者がすべて孤立しているとは限りません。むしろ、ひとり暮らしの人のほうが自由を謳歌し、自分らしく生き、助けが必要なときには上手にサービスを活用するケースもあります。
そういう人が最後にひとりで息を引き取ったとしても、それは「自立死」、“死んじゃった人の勝ち”なんです。
発見が遅れたからといって、あの世に行きづらくなるわけではありません。誰もそばにいなくたって、人間はひとりで死ねるのです。ただ、死亡の発見が遅れると、「孤独死」だとマスコミが騒ぎます。そんなの、騒がせておけばいい。
行政の人も手一杯にやっています。隣近所の人と交流があったとしても、見張り番をしているわけではないのです。あるがままでいいのだと思います。とはいえ、それが嫌なら、そのときに備えて、緊急連絡先や終末期の延命治療や、死のこと、葬儀、埋葬などに関することをエンディングノートなどにまとめ、第三者にもわかるようにしておく。すると、ひとりで死ぬことも怖くなくなると思っています。

鎌田實
2005年より諏訪中央病院名誉院長。チェルノブイリ原発事故後の1991年より、放射能汚染地帯へ医師団を派遣し、医薬品を支援。ウクライナ避難民支援にもいちはやく着手。 2004年からイラクの4つの小児病院へ医療支援を実施、難民キャンプに5つのプライマリ・ヘルス・ケア診療所をつくった。国内でも講演会、支援活動を行う。