大規模な研究により、世界的に男性の精子数が激減していることが明らかになりました。
そして、日本では、夫婦の約4.4組に1組が不妊の検査・治療の経験があり、「不妊治療大国」と呼ばれることもあります。
不妊の約半数は男性に原因があります。
妊娠するためには、精子が良好な状態であることが肝要です。では、どうすれば、質のいい精子を保てるのでしょうか?

村上 知彦医師(日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医)
村上 知彦医師(日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医)
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今回、村上 知彦医師(日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医)の監修で、精子を良好な状態にするための注意点等についてまとめました。

「男性不妊」の多くは原因不明

日本では現在、夫婦の約4.4組に1組が不妊の検査や治療の経験があります。「不妊治療大国」とも呼ばれる所以です。
では、「不妊」とはどういう状態のことを言うのでしょうか。
不妊とは、「男女が妊娠を希望し1年間、避妊することなく性交を続けているのに妊娠しない場合」(日本産科婦人科学会)。
「たった1年で不妊判定なの?」と感じるかもしれませんが、一般的な夫婦生活を行っている場合、1年以内に80%の夫婦が妊娠をしています。(2年以内では90%)

不妊は、男性に要因があるケースも多くあります。

(WHO報告)
(WHO報告)

●不妊の原因の内訳(WHO報告)
男性のみ 24%
男女とも 24%
女性のみ 41%
原因不明 11%

つまり、不妊の原因の48%に男性が関与しているのです。

男性不妊80~90%を占めるのが、精液を作る機能に問題がある「造精機能障害」。
「精子の数が少ない」「精子の運動率が低い」「奇形精子の割合が多い」…いずれか1つが該当することもあれば、3つとも該当することもあります。
そして、なぜ造精機能に障害が生じたか、大半は原因不明です。

40年で精子数が激減!

精子の数ということで言えば、衝撃的なデータがあります。
2017年に「北米・欧州・オーストラリア・ニュージーランドの男性の精液を約40年間調査した結果、精子濃度が52.4%、総精子数が59.3%減少した」という論文が発表され、大きな反響を呼びました。
40年間で精子数が6割も減少していたのです!

同じ研究グループは、さらに2018年までのデータを含み、南アメリカ・中央アメリカ・アジア・アフリカの男性のデータを追加して、2023年に新しい研究論文を発表しました。
その結果、すべての地域で精子数と精子濃度の著しい減少傾向が明らかになったのです。
さらに、2000年以降のデータに限定したモデルでは、全世界的に減少のペースが加速していることもわかったのです。

日本人男性の精子について調べた研究もあります。
20~44歳の日本人男性(平均年齢32.5歳)と、ヨーロッパ4カ国(フィンランド・スコットランド・フランス・デンマーク)の男性の精子数を比較した研究では、日本人男性の精子数が最も少ないことが明らかになったのです。
その数は、最多だったフィンランド男性の約3分の2でした。

また、有名人が60代や70代で父親になったというニュースを耳にすると、「いくつになっても男性は子どもが作れる」と思いがちです。
しかし、女性ほどではないにしろ、男性も35歳以降は精子のDNA損傷が増えるなど、加齢が徐々に影響します。

精子を溜めてから射精したほうがいい?

では、どうすれば精子を良好な状態に出来るのでしょうか。
ご夫婦などで妊娠を考えている時には、以下の点を心がけてみましょう。

妊活では、「精子をたくさん溜めてから射精したほうがいいのでは」という疑問がよく聞かれます。
WHOの精液検査ガイドラインでは、禁欲期間は2~7日とされています。ただし、これは精液検査を標準化して比較可能にするための条件です。

妊活という観点ではどうでしょう。
禁欲期間が長くなると精液量、精子濃度、総精子数は一時的に増加します。
一方、古い精子が蓄積して酸化ストレスを受けるため、運動率の低下やDNAの損傷率は上昇することが分かりました。結果として、受精能力が下がるとされています。

また毎日のように射精すると、精子数や射精量が減少しやすくなります。
一日に何度も射精を行うといった極端な射精も、逆に未成熟な精子増加や精液量の低下をまねくため、特に妊活中には不適切となる場合があり注意が必要です。

そこで目安としては、マスターベーションでいいので2〜3日に1回程度は射精して、新しい精子に入れ替えておくのがいいでしょう。

精子は「熱」に弱い

人の体温は36〜37℃ですが、精巣の機能を保つには32〜35℃が理想的です。
こう丸がぶらぶらしているのは、熱を上げないようにするためでもあります。
流行しているサウナや長風呂は、ほどほどにしたほうがいいでしょう。

ノートPCやパッドを膝の上に置いて操作する人がいますが、PC等からの放熱で、陰のうの温度上昇を招きます。
操作はデスクの上に置いて行いましょう。

また、長時間座り続けると陰のうが圧迫され、血流が悪くなり、陰のう周辺に熱がこもります。
仕事などで長時間座ることが多い方などは、1時間に1度は立ち上がって下半身の「放熱」をしましょう。

また、肥満があると太ももとの接触で陰のうに熱がこもりやすくなります。適正体重を心がけましょう。

AGA治療の継続は…

喫煙による酸化ストレスが、精子のDNA構造を傷つけることがわかってきました。ペニスの海綿体への血流も悪くなって、EDの原因になることもあります。
妊娠を考えるうえでも、健康のためにも禁煙をするべきでしょう。

AGA(男性型脱毛症)の治療薬であるデュタステリド、フィナステリドには、性欲減退、勃起不全などの副作用が現れることがあります。
妊活中は、医師と相談して服用を継続するか判断しましょう。

不妊治療は、女性だけではなく、「男女二人の問題」という意識を持つことが肝要です。
自分の精液の状態が気になる男性は、勇気を持って、まずは専門医のもとで精液検査を受けてみましょう。

※この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

記者として社会部10年、経済部2年、ソウル支局4年半の経験を持つ編集長を筆頭に、社会部デスク、社会部記者、経済部記者、モスクワ支局長、国際取材部記者、報道番組ディレクター・プロデューサー、バラエティー制作者、元日経新聞記者、元Yahoo!ニュース編集者、元スポーツ紙記者など様々な専門性を持つデスク11人が所属。事件や事故、政治に経済、芸能やスポーツまで、あらゆるニュースを取り扱うプロ集団です。