ひとり暮らしの満足度が高い

僕が「だからどうだっていうの!」と居直りをすすめるのは、「もしかしたら高齢者のおひとりさま生活は実は幸せなのでは…」というデータがあるからです。

大阪府の辻川覚志(つじかわ・さとし)医師と対談しました。彼の調査では、ひとり暮らしの高齢者は家族と同居している場合より生活の満足度が高く、悩みが少ないことがわかったのです。

しかも高齢で体が不自由になると家族の介護が頼りと思われがちですが、体調があまりよくない人でも独居の人のほうが、満足度が高かったというのです。

つまり、家族がいればいいというものではなく、家族のなかで孤独を感じている高齢者もいるということです。気持ちはよくわかります。

ひとり暮らしのシニアにもいいことがいっぱいある(画像:イメージ)
ひとり暮らしのシニアにもいいことがいっぱいある(画像:イメージ)

僕が長年在宅ケアをやってきて感じたことは、ひとり暮らしの人は強いということです。要介護2くらいまではひとりで家にいたいと言って、上手にホームヘルパーや訪問看護、医師の往診などを利用しながら、とことん家にいるのを実践している高齢者が多い。

反面、なまじ家族がいると「奥さんに迷惑かけてしまう」とか、「本当は施設に行きたくはないけれど、夫のために施設に入る」という選択をしている夫婦もいます。

だから、必ずしもひとり暮らしを否定する必要はありません。ひとり暮らしにもいいことがいっぱいあるということです。

突然の入院にパンツ頼める友を

ただし、満足度の高いひとり暮らしのためには大事な条件があります。それは、信頼できる同世代の友達や親類が2〜3人いて、たまに話ができること。

2021年に発表された内閣府の調査では、日本、アメリカ、ドイツ、スウェーデンの高齢者を国際比較した結果、日本の高齢者の30%は友達がいないという結果が、明らかになりました。

友達がいないことのリスクは大きい。精神面での支えというばかりでなく、健康上のリスクにもつながるのです。

アメリカのブリガム・ヤング大学のジュリアン・ホルトランスタッド教授は「孤独感が短命のリスクにつながる」と言っています。2015年にはさらに、「孤独感は死亡率を26%高め、社会的孤立は29%高める」と指摘しています。

でも、友達がいれば孤独にはなりません。気軽に電話で話せたり、たまにはランチを一緒にして話ができたりする友達がいること、それが大事なのです。