「サンブロックにしてもヘアワックスにしても、目的はあくまで人体に使うためのものですよね。ただ、それをどこに塗るか、つけるかといった問題なだけで。
指先やボールにつけるのは禁止されているけれど、身体に塗ってあるものに触れた手でボールを握ればいい。あるいはピッチャーではなく、キャッチャーにつければいい。
もしも問題になりそうならば指先を拭けばいい。“それは別にルール違反ではないだろう”、そんな発想でした」

井川はサンブロックを選択した。それでも、まだボールは滑る。
「サンブロックだけでもボールがしっとりとして、かなり投げやすくはなるんですけど、それでもまだ滑る。そこで、ロジンバッグと合わせるとようやくべたつきが出るんです。
でも、慣れていないと今度は逆に引っかかり過ぎてしまう。夏場になると汗をかいて指先が湿ってくるのでいいんですけど、春先は本当に大変でした」
それは、ルールに抵触しないギリギリの決断だった。
初登板は納得いかない結果に
4月7日、メジャー初登板となったボルチモア・オリオールズとの一戦は5回を投げて2本のホームランを喫し、7失点となった。
勝ち負けはつかなかったものの、変化球の制球に苦しみ、まったく納得いかない結果に終わった。
この日を振り返ってもらうと、井川は淡々と答えた。