大阪市此花区にある、一棟まるごと“民泊施設”の新築マンション。部屋は200室ほどあり、天然温泉も付いているといいます。

インバウンドが急増する中、旅行者の救いとなる一方で、近隣住民から聞こえてきたのは、“住環境の悪化”を訴える不安の声でした。

8月1日には、午前4時頃に消防隊員や警察が駆けつける事態が発生。目撃した人によると、上半身裸で、水着のようなものをはいた人物らが、川から救助されていたといいます。

民泊近くの川での騒動を目撃した人:
何語かもわからないような声でわーとしたので外を見たら、誰かが溺れている感じで捜索していると。多分泳いで溺れた。
「助けてくれ」という声がもうすごく響き渡っていたんで、完全に寝てたんですけど、起きてしまったという感じですね。(家の)窓も閉まっていたんですけど、それでも分かるくらいでした。

騒動を起こした人物らは、日本語ではない言葉を話しており、その後、警察と一緒に民泊マンションに入っていったといいます。
ホテルが建てられない地区に「民泊」
国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例、いわゆる「特区民泊」の区域として指定されている大阪市。市内だけでも6000を超える民泊施設があり、前述の民泊マンションもそのひとつです。

「此花区特区民泊反対有志の会」の代表によると、当初は「賃貸マンション」という触れ込みだったという民泊マンション…。

「此花区特区民泊反対有志の会」代表:
人の出入りが増えると、交通も増える、車も増える。小さいお子さんをお持ちのご家庭も多いので、そのあたりの不安を感じている方は非常に多いですね。
この地域は、ホテルの新設はできないと地区計画では大阪市が定めています。元々、「賃貸マンション」って聞いていたので、それが全部民泊って…僕はもう、ホテルだと思いましたね。

実際、民泊マンションの前は、片側一車線の道路ですが、利用者の送迎などで頻繁に車が停車するため、スムーズな往来がしづらくなったといいます。
近隣住民のこのような声を、民泊マンションの事業者はどのように受け止めているのか?「サン!シャイン」が事業者に取材を行うと、以下の返答が返ってきました。

民泊マンションの事業者
「特にトラブルは発生しておりませんが、近隣で路上駐車が見受けられた場合などによる現地での対応については、隣接マンションの理事会と定例の打ち合わせを行う中で、双方協力して検討し、ドライバーへの声がけなどを進めております。地域の方とは、お互いに協力しながら、地域の環境を維持していこうという考えを共有しております」

大阪市此花区には、この民泊マンションの他にも多くの「民泊」が存在しますが、他の場所でもごみ問題や深夜の騒音などに悩まされているといいます。

此花区西九条連合第一町会 松本昭彦会長:
今、「特区」いうてかなり緩和されとるんです。家主さんの方へ不動産屋さんが「民泊をやりたい」といって勧めたり、また、民泊はもうかりますもの。一番困るのが、家主さん自身が日本の方ばかりではないらしいですね。
寝屋川市長が語る“特区民泊離脱”の理由
増加する“民泊問題”の中、特区民泊実施エリアの一つである大阪府寝屋川市が、「特区民泊」からの離脱を表明。大阪府を通じて、国に認定廃止を申し立てたことを明らかにしました。

この決断に関して、寝屋川市の広瀬慶輔市長は…。
寝屋川市 広瀬慶輔市長:
本市に暮らす人の満足度を最大化したいとするまちづくりの方向性と、特区民泊が目指す方向性は大きく異なるものです。今の寝屋川市には、「特区民泊」は不要であると判断しました。
現在、寝屋川市には特区民泊施設は2軒。市にトラブルなどの相談はありませんが、近隣住民によると、「夜の2時、3時にインターホンが鳴ったり、キャリーバッグを引きずる音がして目が覚める」ことがあるといいます。

そんな、注目の寝屋川市の広瀬市長が、「サン!シャイン」に生出演。今回の決断に至った理由を話してくれました。

寝屋川市 広瀬慶輔市長:
子供たちが平穏に学び、生活ができる、そんな街を目指していこうとブランド作りを進めている中で、「特区民泊」という方向性と、街のこれから目指すべき方向性に少し差が出始めてきたなと考える中で、こうした決断に至りました。
これから、大阪市なんかが検討されておられて、近いうちにおそらく様々な制限がかかってくるということになると思います。そうすると、これまでホットスポットだった大阪市内から、その周辺に特区民泊のホットスポットが移ってくることも考えられるので、今の間にしっかり対策をしておいた方がいいのではないかと。

――他の市から「うちも離脱を」という声は?
そこまで話はしていませんが、流れとしては、これからの街の方向性や優先順位を、今回の寝屋川市の判断を元に、判断していくことになるのではないのかなと。一石を投じることになると思います。

特区というのは、その時々の役割があります。それぞれの役割が変わってくる、例えば大阪の特区民泊の場合は、今ちょうど万博をやっていますので需要があって、宿泊施設の供給が追いついていないということで検討されてきた内容だと思うので。
ただし、万博がもうそろそろ終盤にさしかかって、かつ宿泊のホテル数も増えてくる中で、役割というのは変わっていくと。その中で、デメリットがメリットを上回っていくというなら、それぞれの自治体が新たな判断をしていくのは必然ではないかと。
(「サン!シャイン」 2025年8月14日放送)