いまのMLB(メジャーリーグベースボール)は、驚異的な進化を遂げている。
核心部分は「選手の評価システム」から「選手のポテンシャルの予測」へと変化していることだ。
いまだ「データ活用は是か非か」といった議論が存在する日本とは、別の次元にMLBは足を踏み入れている。
広尾晃さんの著書『データ・ボール アナリストは野球をどう変えたのか』(新潮社新書)から、なぜMLBがここまでイノベーションを起こせたのか、その背景を一部抜粋・再編集して紹介する。
MLBは競争激しく独立採算
「マネー・ボール」以降の、MLBの驚異的なイノベーションの背景には、MLBが置かれている激しい競争環境がある。
北米4大スポーツ (アメリカンフットボール=NFL、野球=MLB、バスケットボール=NBA、アイスホッケー=NHL)の中で、野球はファンの年齢層が最も高く、若年層に人気がなかった。
また優秀な選手、人材をNFLやNBAにとられることも多かった。
こうした状況に対応すべく、バド・セリグ(1934〜)、ロブ・マンフレッド(1958〜)と二代のコミッショナーは、世界も視野に入れた市場の拡大、試合時間の短縮、怪我やアクシデントの予防、ITによる情報発信など改革を進めてきた。
「マネー・ボール」から始まった野球の情報化の流れも、MLB全体のこれらのイノベーションに取り込まれる形で進化したと言ってよいだろう。