朝ドラで注目の小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と妻・セツの実際の人物像は?近・現代歴史作家の青山誠さんが考察する。

文・写真=青山誠

明治24年(1891)8月13日、ハーンとセツは鳥取県西部の伯耆(ほうき)への小旅行にでかけた。2人だけで旅行するのは初めて。ということは、これが“新婚旅行”ということになるのだろうか。

微妙な“新婚旅行”?

「真っ白い道が、低い断崖沿いにうねうねと続く。これが日本海沿岸だ。左手には、狭い一筋の石だらけの土地か、あるいは小高い砂丘の向こうに、青い皺を寄せた日本海が果てしなく広がっている。」(ラフカディオ・ハーン『新編 日本の面影』)

島根県東部と鳥取県西部にまたがる中海(イメージ)
島根県東部と鳥取県西部にまたがる中海(イメージ)
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松江の大橋川の袂にある船着き場から蒸気船で中海を渡って米子まで行き、そこから人力車で伯耆街道を東へ。日本海の景色を眺めるうち、八橋宿に到着した。投宿した旅館は街道筋のにぎやかな表通りにあったが、裏手の路地を通ればすぐに海がある。目の前には延々と続く砂浜と海原が広がっていた。

ハーンは八橋をいたく気に入り長逗留した。日中は海水浴を楽しみ、夜にはセツが仕入れた地元の怪談や奇談を聞いて過ごしたという。この頃になるとセツはストーリーテラーとしての才能に目覚め、ハーンもまたそれに気づきはじめていた。

昼は海水浴、夜は怪談を聞いて過ごした(イメージ)
昼は海水浴、夜は怪談を聞いて過ごした(イメージ)

旅の宿で聞いた「鳥取のふとん」を、ハーンがとくに気に入り面白がっていた。有名な怪談なのでここで内容には触れないが、寝物語に聞かせるには、地元の怪談は最適の題材ではある。が、この話のネタ元は鳥取出身のセツの前夫・為二だった。

前夫に聞いた話を、新婚旅行中の新しい夫に聞かせるとは、どういう心境なのだろう?あるいは意趣返しだったと邪推できなくもない。

八橋での滞在中、ハーンは日中ずっと海水浴三昧だったという。その間セツは捨て置かれ、退屈していたのかも…?