シリーズで伝える『2025くまもとニュースの深層』。今回は熊本県で年明けに控える最低賃金の改定の観点から、熊本の暮らしを見つめる。

全国最大の引き上げ額 最低賃金1034円へ

2025年9月に熊本県の最低賃金について話し合う審議会は、現在の952円から82円引き上げ『時給1034円』にすると決定した。82円の引き上げは全国最大で、最低賃金が1000円台となるのは、熊本県内で初めてだ。

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2026年1月1日から発効されることになっていて、街の人は「TSMCが来ているので、県内の最低賃金が上がることで街中も活性化するといい」や「物価が高くて苦労している。当然賃金も上がらないと」と歓迎する声の一方、「『年収の壁』を超えないよう働き控えにつながるのでは」という声も聞かれた。

人件費アップに働き控え 使用者側の懸念

大幅な賃金アップ、使用者側はどのように受け止めているのだろうか。八代市にある新鮮な海の幸が味わえる『いけす料理・宗弘』は正社員・アルバイトなど、計約40人を雇用している。アルバイトの賃金アップによって、正社員の賃金も上げざるを得ず、社会保険料といった会社側の負担が増えることも懸念している。

いけす料理・宗弘の近宗馨副社長は「〈(賃金を)もっと上げたい〉という思いはある。社会保険料が上がるということは、賃金を上げたくても、その負担が会社にくるので難しい」と話す。

また『年収の壁』による働き控えで、人手不足が加速することも不安視している。近宗副社長は「従業員から『すみません、オーバーしているので』ということもある。来年はもっと厳しくなると思う。現状、原材料費から全部上がっているので、お客さまへの価格転嫁というよりは、やりきったところがあるので利益を縮小するとか…」と話す。

県内経済への影響について地方経済総合研究所の嶋田英岳主任研究員は「最低賃金の引き上げの効果として、実質賃金が上昇するかというと、働き控えにより手取りが変わらなければ消費が増えることは難しいため、県内経済への寄与度は限定的になると考えられる」と話し、「事業者にとっては継続的な生産性向上が喫緊の課題となる」としている。

(テレビ熊本)

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