シリーズで伝える『くまもとニュースの深層』。今回は熊本地震からの復旧を目指す熊本城、2025年も被災した櫓の復旧や石垣の積み直しなどが、城内の各所で行われた。昭和2年以来、約100年ぶりの全解体が行われた宇土櫓と、まるでバーベキューのような工程で再建が進む南東櫓群の2カ所を訪ねた。

熊本城の第三の天守・宇土櫓のいま

まず訪れたのは熊本城『第三の天守』とも言われる宇土櫓。

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郡司琢哉アナウンサー:やっぱり何もない
熊本城調査研究センター岩佐康弘所長:何もないけど、ここに歴史がギューギューに詰まっている所ですもんね

創建当時からの姿をとどめる城内唯一の五階櫓で、国の重要文化財に指定されている宇土櫓。

2016年の熊本地震で柱が折れたり、床が傾くなどの被害が出たため、再建のための解体工事が2年前に始まり、2024年の今ごろは骨組みだけが残る姿だった。それが、今はすっかりなくなっていた。

郡司琢哉アナウンサー:熊本に400年ぐらい建っていたものが、ない状態で年末を迎えている貴重なシーンでもありますよね
熊本城調査研究センター岩佐康弘所長:定かではありませんが、初めてかもしれませんよね。こういう状態で年越しというのは

今は、他の城郭であれば天守閣に匹敵する五階櫓がどのような構造の上に建っていたのかを見ることができる貴重な機会。

建て直す前にやるべきこともあるようで…。

熊本城調査研究センター岩佐康弘所長:ブルーシートがかかっているんですけど、江戸末期の面がどこにあるのか、そういった所を確認するために、我々は『確認調査』と言っていますけど、分かりやすく言うと『発掘調査』をやる予定です。年明けから今年度いっぱいにかけて

取り外された柱や梁などの木の部材、約5000点のうち3割程度が江戸期に加工された可能性があるとのこと。再建の際には使えるものは使われる予定だ。

創建当時の姿とどめる南東櫓群のいま

続いて訪れたのは、天守閣から見て南東側にある『南東櫓群』。田子櫓など5つの櫓で、こちらも創建当時からの姿をとどめる重要文化財。

郡司琢哉アナウンサー:坂口さん、いま南東櫓群は建設の段階でいうと、どんな工程に入っているんですか?
熊本城総合事務所・復旧整備課 坂口瑞枝さん:はい。解体が必要な2棟の解体を終えて、次の組み立ての復旧の段階に入っています。あと壁の方も準備が始まっているところです
郡司琢哉アナウンサー:前回の報道公開の時(10月)と比べると、田子櫓だいぶ進んでいるようですね
熊本城総合事務所・復旧整備課 坂口瑞枝さん:木の組み上げも順調に進んでいます

南東櫓群は江戸時代初期に創建されたとみられているが、熊本地震では外壁に亀裂が生じたり、柱が傾くなどの被害が出て、復旧のための解体工事が2024年8月から行われてきた。

そして『解体』から『再建』へと工程が移り、2025年10月に建物の骨組みが完成した。骨組みが完成すれば次は壁の作業。城造りには欠かせない漆喰の製造過程を見せてもらった。

カワゴエ・丸山憲一さん:『銀杏草』というものです
郡司琢哉アナウンサー:『銀杏草』って何ですか?
カワゴエ・丸山憲一さん:海に生えた海藻なんですけど。ノリのエキスというか自然のエキスが出て、普通の水よりも粘土の高いノリができます。それを練ることによって漆喰に粘りが出ます
郡司琢哉アナウンサー:熊本城の中で火を使った作業をされているというのは知りませんでした
カワゴエ・丸山憲一さん:全然能率が違うものですから、直火で炊かせていただきたいと相談をしました

水を入れた窯に銀杏草を投入し、薪を燃やして煮立たせる。あらかじめ訪れた観光客の懸念を払拭する配慮もされているようで。

熊本城総合事務所・復旧整備課 坂口瑞枝さん:特別見学通路からご覧になったお客さまが煙が上がっているのを見て驚かれないように、作業小屋の屋根に『火気使用中』漆喰作成のためということで周知の看板も置いています
郡司琢哉アナウンサー:(書いてないと)狼煙が上がっていると思うかもしれませんね

手間暇かけて作る漆喰の製造工程

着火から50分後、熱めのお風呂くらいに温まると、窯の中にも変化が現れる。作業小屋にもほのかな香りが漂います。火をつけてから約1時間50分、銀杏草をこし、抽出した液体に『マニラスサ』と呼ばれる繊維状のものを入れてかき混ぜ、貝殻を粉砕して焼いた『貝杯』を投入し、さらにかき混ぜる。

郡司琢哉アナウンサー:このぐらいの粘りがちょうどいい状態なんですね
カワゴエ・丸山憲一さん:長時間混ぜるのも均一にするためにある程度回さないとスサが回っていかない
郡司琢哉アナウンサー:なんだろう、つきたてのお餅よりもネバネバして、ノリの状態ですね。よく見るとスサが入っているんですね

作業開始から2時間半でようやく最初の漆喰が完成した。煮出した液体から漆喰を作る作業は、このあと何度も繰り返される。こうして作られた漆喰は四間櫓など櫓の軒裏部分に塗られていく。

このように直接塗る場所には木の部材に竹に縄を巻きつけた『縄巻竹』を取り付け、漆喰が剥がれにくくする。南東櫓群ではこうした作業が2026年春まで行われる予定だ。

南東櫓群は2028年度 宇土櫓は2032年度

熊本城調査研究センターの岩佐康弘所長は「熊本城域、広い中でいろんな所で設計、調査、石垣の回収作業を進めています。まだまだ続くので、しっかりやりながら一歩一歩、歩みは遅くとも、完成2052年度を目指して進めているところで、これを着実に進めていくところが我々の一番大切なところだと思っています」と話す。

地震で大きく傷ついた建物を、歴史的価値を損なわず後世へと引き継ぐ重要文化財の復旧。2026年4月で熊本地震から10年だ。

熊本城には江戸時代から存在し続けた重要文化財建造物13棟と、昭和や平成に復元された再建復元建造物20棟の2つがあり、熊本地震では全てが被災した。

復旧が終わっているのが長塀、監物櫓、天守閣の3つ。今回の南東櫓群は2028年度、宇土櫓は2032年度に完成予定。全ての復旧完了は地震から36年後の2052年度の予定で、いま地震から9年が経過したので、ちょうど4分の1という段階だ。
(テレビ熊本)

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