はっきりした理由は分かりませんが、気候が温暖になり、コロナ禍が収束して飲食店が活発になってエサも豊富になるなど、ネズミの成育環境が以前よりよくなったことで「ネズミたちの寿命が延びたのではないか」…と私は考えています。
なぜなら、巨大化したネズミたちには総じて、高齢動物特有の“感覚や運動機能の衰え”がみられるからです。
「ネズミは警戒心が強くて、すばしっこい生き物」と思っている人が多いはずですが、老ネズミの場合は人間が近づいても逃げようとはしません。最初は「繁華街で暮らすうちに人間の存在に慣れて、神経が図太くなったのかな?」とも思ったのですが、どうやらそうではなく、加齢のせいで耳や目の感覚が衰えて人が近づいても気がつかないようなのです。
人間も年をとると、目がかすんだり、耳が遠くなったりしますよね。私が出会った巨大ネズミたちはみな、それと同じような症状を示していました。私が近づいてしばらくすると逃げようとするのですが、まるで「よっこらしょ」と言いながら立ち上がるお年寄りのような緩慢な動作でゆっくり逃げていくのです。
毒エサを食べずに眺めている
機敏に動けなくなった年寄りのネズミなら、若いネズミと比べて駆除や捕獲は簡単そうに思えますよね?ところがじつはこれが逆にやっかいなのです。
通常ネズミを駆除する際には、毒エサを撒いたり、粘着トラップを仕掛けたりするのですが、年寄りのネズミは食が細くなっているので、毒エサを置いてもぼんやりエサを眺めているだけで、なかなか食べてくれません。
