ヘリコプターでパトロールや事件捜査などに当たる警察航空隊。熊本県警に2025年度、九州では初めてとなる女性整備士が採用された。上空から県民の生活を守るその仕事に密着した。
九州初の警察航空隊の女性整備士
空に向かって飛び立つ青色のヘリコプター。名前は『おおあそ』、熊本県警航空隊のヘリコプターだ。熊本県警航空隊はこのヘリを使ってパトロールのほか、逃走車両の追跡などといった事件捜査、災害現場では行方不明者の捜索などを行いる。上空から県民の安心・安全を守る仕事だ。

今から約半世紀前、1977年に創設された航空隊。現在の機体は3代目です。熊本空港に隣接する熊本県総合防災航空センターを拠点に活動している。所属隊員は隊長以下8人で、パイロットと整備士がそれぞれ3人の少数精鋭だ。

フライト前、念入りに機体の細部をチェックしているのは、今年度、航空整備士として採用された警察職員の山下海幸さん、22歳。「カメラの〈がたつき〉がないか、ゴムのようになっている部分が劣化すると亀裂が入るので亀裂がないか、オイル漏れがないかを確認している」と話した。

航空整備士の募集は欠員が出たときのみで、小型機の安全確認ができる『二等航空整備士』の国家資格を持っている人、または取得見込みの人が応募することができる。熊本県警の採用は2年ぶり。九州にある警察航空隊で整備士として女性が採用されるのは、山下さんが初めてで、全国でも7人しかいないという。
ヘリの整備だけでなくカメラの操作も
この日の午前中は約1時間半のパトロールへ。整備士は、フライト前後に機体を整備するだけではなく、パイロットと一緒にヘリコプターに乗って、後部座席でカメラを操作。撮影された映像は県警本部の通信指令課や各警察署に送られている。細かな操作が必要で、そのまなざしは真剣そのものだ。

パトロールを終えるとすぐに格納庫に機体を移動し点検を始めた。山下さんは「いつ(出動)要請が入るか分からないので、エンジンのオイル漏れがないかなどを確認しています」と話す。

山下さんはモノづくりが好きな祖父と父親の影響で、整備関係の仕事に興味を持ち、地元・福岡県の工業高校に進学した。山下さんは「幼いころ、実家に不審者が入ったことがあり、子供だけの状態だったからすごく怖かった。警察がこまめに見回りに来てくださって、身近なところで安全を守るのが〈すごくかっこいい〉と思って警察に憧れた」と振り返る。

警察業務にも憧れていて、仕事について調べる中で警察航空隊を知り、目指すようになったという。高校卒業後は岐阜県にある専門学校で3年間学び、資格を取得。2025年の春に、念願の警察航空隊の一員となった。
先輩たちのアドバイス受けて成長
まだまだ駆け出しの山下さん。日々、先輩たちから学んでいる。パイロットの青柳友亜岐さんは「一回、一回、止めるようなイメージを意識すること。光源がどこから入ってきているのか、広葉樹の隙間から狙うなら順光じゃないと撮れないとか。そういうところを意思疎通しながらやっていくといいと思う」とアドバイス。

山下さんは「パイロットとのコミュニケーションが迷ってちょっと遅れたり、うまく取れてないなと思うときがあるので、積極的にコミュニケーションをとっていきたい」と話し、先輩たちも山下さんの成長に期待している。

中島英幸副隊長は「男性の先輩に負けないぐらい頑張っている。『女性だから』というところでは心配していない」と話した。

また、航空整備士の小林祐太郎さんは「指示をしっかり聞き、理解した上で行動しているように見受けられる。(男女の)違いはないが、体格が違うので彼女にあったスタイルを模索している」と気に掛ける。

航空整備士の小松大和さんも「一生懸命、頑張っている。余裕をもって教えられる環境なので、一つずつ身に付けていければ」と話した。
「安全な暮らしを守っていきたい」
山下さんは整備だけでなく、実際にヘリコプターに乗って県民の安心・安全を守るこの仕事にやりがいを感じている。

山下さんは「熊本は災害が多いと思うが、(災害時などの)捜索ですぐ見つけて、少しでも多くの人の命を救ったり、事件捜査にも貢献して、安全な暮らしを守っていけたらなぁと思う」と話した。

地上ではヘリの安全運航を支える整備士として、また、上空では機動力を生かした警察航空隊の一員として日々、努力を続ける。
(テレビ熊本)
